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桜の降る時
【初恋 恋愛小説】

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桜の降る時-4

 あたしが恋?しかも先生に?
 ベッドに入ったけど、ちっとも寝付けず、菜月に言われたことを思い出していた。
 藤森先生は確かにかっこいい。他の女子も騒いでいるし。それに大人の魅力もある。でも、だからってそれが好きってことにつながるの?…違うと思うんだけど。でも菜月の言うとおり、藤森先生が気になる。気が付くとあたしの視線は先生を探している。なんで?あたしが先生のこと好きだから?
 あーっ、もう!わかんない!寝よ、寝よ。
 あたしは眠りについた。
 夢の中であたしはまた桜の下にいた。
 どうして、どうして来てくれないの?2人で遠くに行って、結婚しようって、幸せになろうって言ったじゃない!この桜の下で待ち合わせしようって、あなたが言ったのよ。だから待っててって。どうして来てくれないの?嘘だったの?蓮。蓮。蓮!
 目が覚めた。まだ夜中だった。
 あたし、夢の中で、桜の下で「蓮」を待ってた。蓮って…。現実と夢がごっちゃになってるのかしら?菜月があんなこと言うから…。
 あたしは再び眠った。
 
 「さくら様。さくら様。」
 うーん?誰?眠いんだから起こさないでよ。
 「さくら様っ!いい加減に起きてください。ご主人様がお待ちですよ。」
 「蓮…。まだ眠いんだけど…。」
 「相変わらず、寝起きが悪いですね、さくら様は。」
 蓮はあたしのおでこにそっとキスをする。
 「…。起きます。」
 あたしは起きると蓮に抱きつく。
 「さくら様。いけません。誰かに見られたら…。使用人の私と、鈴本家のお嬢様が…。」
 蓮の言葉をキスで止める。
 「なぜ?人を好きになるのに、お嬢様だからとか使用人だからとか関係あるの?あたしは蓮が好きなの。蓮は違うの?」
 「もちろん、私だってさくら様を愛しています!でも…身分が違いすぎます。鈴本家のお嬢様であるさくら様と、使用人である私と…。許される恋ではありません。ですが…、さくら様を愛しているという気持ちは止められません。」
 「でしょう?あたしだって蓮が好きよ。身分の違いなんて関係ないわ。大丈夫。ちゃんと医者になってこの家を継ぎます。その代わり、お父様にはあなたとのことを認めてもらいますから。」

 「お父様。失礼します。さくらです。」
 「入れ。」
 ドア越しに厳しい父の声が聞こえる。やだなぁ。どうせ、医者になるための勉強はしてるか、鈴本家の令嬢としてふさわしい振る舞いをしているかとか、そんなこと言われるんでしょ?
 「お父様。お呼びだとのことで…。」
 「うむ。どうだ、さくら。この鈴本医院を継ぐために勉強のほうはきちんとしているのか?」
 やっぱりね。あぁ、だるい。早く話を終わらせて蓮に愚痴りに行こう。あたしは笑顔を作り、父親の前で、良家のお嬢様を演じた。
 「もちろんでございます。鈴本家の名に恥じないよう、勉学に、自分を磨くことに努めておりますわ。」
 「さすが鈴本家の娘だ。お前も美しくなった。どうだ、そろそろ婚約でも。鈴本家には男子がおらんしな。早く婿をもらい、私を安心させてくれ。…悪い虫がつくと困るからな。実は私の信頼のできる部下がおってな。外科部長の橋本くんといって、まだ若いが腕は確かだ。私は彼とお前にこの鈴本医院を継いでもらおうと思っているんだ。彼も喜んでおったよ。」
 あたしは父の言葉に耳を疑った。話ってこのことだったのね!
 「お、お父様。まだ私は医者になるために勉強中の身であります。こ、婚約とはまだ早すぎるのでは…。」
 「お前の母親もお前くらいの年に私と結婚した。早すぎるということはないだろう。先程も言ったが、悪い虫がつくと困る。そうそう。蓮、とか言ったかな?あの使用人は今月いっぱいでやめてもらうことにしたからな。」
 なっ!蓮がやめさせられる?どうして?もう5年も鈴本家に仕えているのに? 「なぜです?彼をやめさせなくても…。」
 「やめられると困る理由でもあるのか?年頃の娘のそばに若い男がいるのは良いことではないだろう。」


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