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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲〜番外編〜-2

青竜刀を後ろにひいた。
同時に龍也の上半身が慣性の法則により体が前のめりになる。
その隙を全く逃さずに膝蹴りをくらわすファング。
龍也の体が後ろに反った所で青竜刀で斬り込む。
「さ、させっかよ!」
腹に膝蹴りを受けたので苦しそうにはしているものの、ファングの青竜刀だけは受け止めた。
それを軽く右にさばいてがら空きになった左横腹にミドルキックを炸裂させる。
ファングが苦悶の表情を浮かべる。
だが龍也は休む事なく攻撃を続ける。
剣を上からふるい落とす。
だが、自分は戒なので相手を殺すわけにもいかない。
あくまでも戒は敵戦力の殲滅を生業としているのであって敵を殺害する権利はない。
殺した時点で戒としての権限を全て奪われる。
その後、今度は犯罪者として戒によって戒められる立場になってしまうのだ。
戒と言う組織において殺人兵器は高いリスクを生じさせる事になる。
だからこそ龍也は威太刀という剣を使っている。
何故ならこの武器は銘の通り『威の太刀』だからだ。
威とはすなわち気。
つまり使い手の気によって相手を斬る剣である。
だから使用者に殺害の意志がなければ相手を斬って殺すことは出来ない。
だからこそ、龍也は目の前にいるファングに対して堂々と斬りつける。
だが、その攻撃は巨大な盾によって封じられた。
フォートレスの盾だ。
「兄者を殺させるわけにはいかない…。
アキレス様の為にな!」
その盾を使ってどんどん龍也を押していく。
「させない!」
さっきまでフォートレスと戦っていた楓が横からフォートレスに攻撃を仕掛ける。
いくら巨大な盾といえど有効範囲は前方のみ。
後方や側面から攻撃にはめっぽう弱い。
だが、フォートレスの穴は見事にファングが補強していた。
「弟には指一本触れさせん…
これ以上アキレス様に失わせないためにも!」
楓の両のトンファーを弾いて鳩尾を拳で突く。
楓は後方へ飛ばされるが、足で着地した瞬間に地面を蹴って再びファングの間合いの中に入る。
ファングの体は動くこともできずにただ視覚で楓の動きを追うだけだ。
「はぁ!」
両のトンファーは楓の体という勢いをつけて一点を目指す。
それはファングの鳩尾。
クリーンヒットして今度はファングが後ろに吹っ飛んでいく。
そして楓にとっては幸いな事に、そこにはフォートレスが後ろ姿を見せて立っている。
…ぶつかってくれる!
楓がそう確信した時だ。
「フォートレス!」
兄の叫びを敏感に聞いたフォートレスは龍也との競り合いをはじき返すと言う行動で中断して龍也に背を見せる。
そしてどっしりとファングが向かう先に盾を構える。
ファングはその盾に足で地面と平行になる形で着地する。
そして盾を蹴る。
先ほどの楓と同じようにファングは楓めがけて飛んでいく。
ただ違った所は楓の対応だ。
楓はファングのドロップキックを横に動いてかわした。
ファングはそこでおとなしく地面に立ち上がる。
「今のをかわすとは…三神の血は容易な相手ではないと言うことか」
まるで楓は三神の血を継いでいなければただ女とでも言うような挑発的な発言。
だが、それを楓は鼻で笑った。
「今の私の戦闘は戒の楓としての戦闘よ。
でもそんなに知りたいのなら見せてあげるわ。
三神の楓としての私の力を。
私も急いで決着付けたいところだしね」
そう言うと楓はトンファーを見る。
そして、トンファーを握る手の力を強くする。


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