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愛の手紙
【その他 官能小説】

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愛の手紙-5

 上杉は考えて、別の方法を試みることにした。ロータリーに面したビルの二階にカフェがある。そこからチェックしてみることにした。
(相手は何度も俺を見ている。ここのところ連日ぶらついていたのだ。おそらく駅前に来れば先ず俺を探すだろう……)
 通行人の流れの中でちがった動きをすると思う。立ち止まって周囲を見回すなり、あるいは遠巻きにロータリーを周回したりするかもしれない。少なくともそそくさとバスに乗り込むとは思えない。

 窓際の席からは駅前が一望できる。距離があるので顔の確認には不向きだが、行動を見るには格好の場所である。

 上杉は思いついてから四日間、暗くなるまで女を探した。二日目には早くも苛立ちを感じ始めた。おやっと思う女を目で追っていくと、離れたところから男が手を振ってきたり、二十分も立ちつくしている女がいて、
(これだ……)
席を立ちかけると迎えの車がやってきたりした。そんなことが何度もあった。

(おかしい……そんなはずはない……)
四日目になって、疑念がわいてきた。
(まさかとは思うが……)
いたずらではないかと思ったのだった。つまり、誰かが仕組んだものではないか。……
 可能性があるとすれば会社の同僚しか考えられない。彼らなら住所も知っているし、帰り道もわかっている。野球部だったことも何人かには話したことがある。俺をからかって、手紙に振り回されているのをどこかで笑っているのではないか。

 今度はその同僚を探した。一番悪ふざけが好きなのは田沼だ。いつか経理の菱川真紀子に偽ラブレターをロッカーに忍ばせた前科がある。どこでおぼえたのか、真夏の火鉢などと化石級の悪口を得意げに口にして彼女を日頃揶揄していた。
「菱川が来るかどうか、賭けようぜ」
待ち合わせに指定した改札口を隠れながら見ていた。哀れにも彼女は一時間以上もじっと佇んでいた。
(あいつならやりかねない……)
だが、あの字は田沼の字ではない。他の同僚だってあんなにきれいな字を書く者はいない。上杉は何ともいえないけだるさを感じながら店を出た。


 ポストに白い封筒を見た時、上杉は微かな熱を感じた。そして次第にふつふつと怒りが込み上げてきた。
(くそ……)
封筒の裏には、W・Tと書かれてある。
 部屋に入ると封筒をテーブルに投げ、缶ビールを一息飲んでから、乱暴に開封した。

『こんなに驚いたことはありません。あなたがすぐそばでコーヒーを飲んでいる。外を見ていた私はあなたが店に入ってきたことに気づきませんでした。一つ置いたテーブルに座ったあなた。私は自分の胸の鼓動をはっきり聴きました。あなたの横顔をこれほど間近で見つめたのは初めてです。
 あなたは窓際でずっとロータリーを見下ろしていましたね。そんなことはあり得ないとは思いながら、もしやと心が騒ぎました。私を探してくれていたのでしょうか?そうだとしたらとても切ないことです。あなたに声をかけられない臆病な私。
 耐えきれなくなって店を出ました。外へ出て見上げるとガラス越しのあなたの顔が涙で滲んで見えました。
 この夜は夢ではなく、生々しいあなたを思い浮かべて熱くなった体をどうすることも出来ませんでした。
 息が止まるほどの口づけ。あなたの下半身が私に触れる。
(ああ、勝哉さん……)
全身が密着して陶酔の波に呑みこまれていきます。
 それだけではいやです。あなたのすべてに口づけしたい。どんなにおいなのでしょう。想像するだけできらめくような快感に包まれます。
 この日、目に焼きつけたあなたの顔。すてきなすてきなあなたの顔。私は両手でその顔を包みます。そっと耳を舐めます。いいですか?頬を伝って首筋へ。いいでしょう?
 肩から筋肉の盛り上がった腕、そして胸。小さな乳首をそっと吸うとあなたは思わず声をあげる。左も右も丹念に愛撫してあげる。
 脇の下から腰にかけては舌の先で字を書くように……そう、毛筆のような柔らかさでなぞってあげる。
 私もあなたと共に昇っていく。愛撫しながら体の力が抜けていく。私の乳首も含んでくださいね。……
 雄々しく猛々しい<あなた自身>を素通りして、導きながらやさしくうつ伏せにする。そしてまた首筋から愛していきます。いいでしょう?
 こんどは広い背中にキスするの。舌先をゆっくりゆっくり移動させる。あなたはのけ反って呻く。ペニスが下敷きになって痛いかしら?もう少し我慢して。
 私に恥ずかしさはない。もう自分が自分でわからない。気がおかしくなっています。
 お尻を閉じないで。蕾までいきたいの。さあ、開いて。
 やがてあなたは堪えていた快感の蓄積を吐き出して叫ぶ。
感じる!
 私はあなたの震えを受け止めて、さらに頂きを目指す。
 起き上がったあなたは怖いくらいに私を見つめる。体も顔も紅潮して、ペニスははち切れそうに漲っている。
 私の名をやさしく呼んでくれるあなた。でも、その声は上ずっていて昂奮の真っただ中にあることがわかる。今度は私が愛撫を受ける番。
 あなたには余裕はない。だって私がいっぱい愛したから。
 荒々しく貪るあなた。私は身を任せて何もかもを捧げる。
(どうにでもして!)
痛みさえ伴う愛撫は性急に進み、あなたは結合を求める。
(好きにして)
私はうつ伏せにされ、お尻を引き上げられる。少し乱暴だけれど、あなたならいい。
(動物みたいな恰好……)
征服される。ああ、入ってくる。あなたの物が……。
圧迫を感じた、と思う間もなく一気に一つになったあなたと私。
 実際はどうなのでしょう。きっと痛いのだろうけど、私にはわからない。指を入れたことはあるけど。
 でも蕩けるような快感が訪れるに決まっている。だって愛する人と結ばれるのだから。……
 ごめんなさい。ごめんなさい。

勝哉さん
                                 W・T   』


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