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殺人幇助財団エカフ
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トオルの場合-2

カエデとはそれ以来連絡が取れなかった。

婚約したとはいえ、お互い仕事を持つ身で、忙しいことまあったが、カエデの方で避けているようだった。

佐藤やその仲間の若者たちとは『甘茶』でよく顔を合わせた。

すると、なにやら意味深な言葉を投げかけて下品な笑いをトオルに浴びせかけることが続いた。

「もちょっと下よ。慌てないでトオル」「なにか敷物がほしいわね」「もっとゆっくり」

その言葉はカエデと廃屋で愛し合ったときに、カエデが言った言葉だった。

彼らは覗き見していたのか?



「そうよ。あんたたちは後をつけられていたの。

そして物陰から息を殺して見ていたのよ。何人がいたと思う?

ちょうどその日は大山の家に9人ほど集まっていてね、宴会をしてたのさ。

社長の大山と局長の青田と青年団の佐藤とその仲間の3人の塚田に米沢に栗田。

その他に大山の子分の真崎・胡桃沢・西森のおっさんたちだ。青年団以外は家族持ちだよ。

あいつらはね、飲むと必ず下の話をするのさ。

佐藤は何人も人の母ちゃんと寝ているし、青田や子分のおっさんたちと東南アジアに何度も行って悪いことをして帰って来てるらしいよ。

カエデといえばこの村では一番の美人だろう?

男どもの話題になりやすいんだよ。

あいつらが2人が裏山の方に行ったという情報を聞いて佐藤のトラックで近くまで行ったのさ。

最初はカエデのその姿を見たいという好奇心だね。

まあ、助平心ってやつで、覗きだけですまそうとしたらしい。

だけど、あんたがトイレのために離れていったから、我慢できずに大山がカエデを襲ったらしいよ。

あんなごっつい親父につかまれたら逃げようがないよね。

その直後にあんたが戻って来たのさ。

カエデはその姿を見られたくなくて、あんたを帰したんだ。

その後、青田を初めおっさんたちが次々にやったらしい。

佐藤や他の若い連中はずるかったからその場ではやらずにカエデに服を着せて帰したらしい。

別の日に呼び出して好きなだけ輪姦したらしいよ。

私やね、あいつらの話しに合わせて面白がる振りをして聞いたんだよ。

そんなことたいしたことないって感じでね。そうしたら、あいつら微に入り細に入りその時の様子を得意そうに話すんだ。

正直反吐が出そうになったよ。

そしてカエデがどれだけ苦しんだか想像するだけで涙が……」

美佐子はそこまで言うと言葉を詰まらせた。

「缶詰工場の大山をはじめ3人の腰巾着は社員から嫌われているね。

随分色々なところから愚痴を聞いたよ。

女工には手をつけるし、部下の手柄は横取りするし、気に入らない奴はクビにするんだ。

局長の青田は大山と同級生だったらしいが、あいつは凄いケチなんだよ。

あいつの馬鹿息子が結婚するときお祝いを包んだのに、私の娘が結婚したと言っても知らん振りしてやがるんだ。

それに気持悪いことに猫が好きで、野良猫に餌付けをして、近所に迷惑をかけているらしいよ。

猫が家の庭に入って花を滅茶苦茶にしたとか、糞で汚して行ったとか、すごい苦情が多いのさ。

だけど、そんなこと気にも留めやしないんだよ、青田の奴は。

それと佐藤だけど、あいつが一番手が悪いのさ。

カエデのことを前から狙っていたんだけれど、相手にされないものだから。

それをよそ者のあんたに持っていかれたって、村にあんたの悪口を言いふらして歩いたのもあいつ……」

トオルは途中から美佐子の話を聞いてなかった。

カエデの苦しみを思うと涙が込み上げてきた。

「僕があのとき、帰らないでカエデさんのところに行ってあげれば……」

「行ってもどうにもならなかったと思うよ。大山は草相撲の大関だった男だよ。

あんたがかかっていっても敵う相手じゃないよ。

それにカエデだってやられた後だったから、あんたには見られたくなかったと思う」

トオルは立ち上がると思い切り柱を拳で叩いた。

そして痛みで思わず屈みこんだ。拳の皮が剥がれて血が滲んでいる。

その背中に美佐子が声をかけた。

「でも、あいつらをまとめてやっつける方法が一つだけあるよ」

トオルはゆっくり振り返った。美佐子は大きく頷いた。

「あるんだよ、本当に」



 


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