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デリシャス・フィア
【その他 官能小説】

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 ついに第三の強姦事件が発覚した。
 この件に関する情報は、瞬く間にネット上を駆け巡った。
 被害者の車のそばをたまたま通りかかった女性が、車内で辱められている被害者を見つけたらしい。

 警察からの声明によれば、被害者が所持していた運転免許証から、彼女がS大学二年の植原咲であることが判明した。

 女子大生連続強姦事件という不名誉な現実を突きつけられて、警察もいよいよ本腰を入れなおして動き出した。

 第二の事件の被害者である徳寺麻美の携帯電話を現場から持ち去ったことについても、とうぜん探っておかなくてはならない要素である。

 解析の結果、その携帯電話のアクセス履歴から、不気味なメッセージへと辿り着いた。

『キョウフノサキニ、カイラクガアル。トリック・オア・トリート』

 さらに調査を進めていくと、おなじ日時におなじ内容のグリーティングメールが、植原咲と、第一の事件の被害者である美山砂羽の元へも届いていた。

 身に覚えのない迷惑メールではなく、それはアダルトブログサイトが発信元であると、彼女らの証言が一致した。

 確認のためにサイトへアクセスしてみると、すでにサイトの存在自体が蒸発していた。

 この手のアダルトサイトにはよくあることで、捜査の熱が冷めた頃にふたたび姿をあらわし、イタチごっこの図式がそこにできあがるのだ。

 ずる賢く、口説き落としたくなるほどスマートなイタチである。
 今回ばかりは何が何でも尻尾を掴みたいに違いない。

 誰一人として命を落としていないというのに、胃液を逆流させるようなレイプ現場の状況は、何を語っているのだろうか。

 男と女のあいだに生まれる独占欲には、何がしかの恋愛感情が作用しているものだ。
 けれども強姦が行われた現場というのは、いつも冷血な感情だけを漂わせている。
 愛情のかけらもないのだ。

「いや、やめて!」

「たすけて、だれか」

「もうゆるして、おねがい……」

「あ、もうだめ、ごめんなさい……」

 はじめのうちこそ拒絶して泣き叫ぶが、犯人に仕込まれてもてあそばれるうちに、淫らな催眠状態へと変化していく被害者の声なき声が聞こえてくるようだ。

 犯人は一体どのような心理状態でその光景を眺めるのか。
 それを知るのは、真犯人ただ一人だけなのである。


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