投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

紅館の花達の最初へ 紅館の花達 65 紅館の花達 67 紅館の花達の最後へ

紅館の花達〜金美花・下編〜-5

翌日も天気は晴れて暖かかった。
だが、私の心は曇り、時々霧だ。
『なんでかなぁ……』
とりあえず私の心に雨が降ることはなくなった。
しかしこうも簡単に切り替わる自分にモヤモヤとした物が心に生まれていた。
(私って……尻軽?)
ずんと沈みながら執務室で作業を続ける。
予想通りだが、紅様はシャナの部屋に泊まったようで、メイド達は噂しあっていた。
(あの二人、確かにお似合いかもね……)
作業の手を止め、考えてこむ。
(なんだかんだ言って……私ってば、紅様を諦めちゃったみたい……
悔しいけど、シャナさんは紅様のハートを鷲掴みだし………)
ムムム〜と変な声が出た後、良し! と頷いた。
単純だが、私は紅様に幸せになって欲しいという結論に至った。 100年前と同じく…
そして、また同じ方法を思い付いたのだった。
『決めた! あの二人を応援しちゃおう!』
私は裏方が似合っている。 表には出なくても良い、二人の幸せが私の幸せなのだ。
さて、と呟いて早速行動に移る。
シャナは今頃この近くの廊下を掃除しているはずだ。
少し様子でも見に行こうと思い立ち、部屋を出る。

切り替わるのが早いなら、良いように切り替えてしまえば良い。

廊下を歩いて行くとそこにシャナは居なかった。
『あら…?』
不思議に思い、ちょっとその場に佇むと何やら部屋の中から声が聴こえてきた。
どうも、修羅場らしい。
(何やってるのかしら……)
溜め息をつきながら扉越しに会話を聞くと……
(………ゼロ………後で酷いわよ?)
どうやらメイドのゼロがシャナに何かしたらしい。
と、どうやらシャナが出てくるようだ。 一旦扉から離れるとシャナが出てきた。
酷く落ち込んで、ポツリと呟く。
『…無いよね…資格なんて…』
『無いわけ無いでしょう。』
反射的に否定してしまった。
『アルネさん…! これは… 二人は悪くないです!
騒ぎの原因は私です!』
シャナは急に慌てだし、弁明しだした。 どうやら、シャナにとって私は、厳しい人、という認識らしい。
自分の眉がピクリと動いたのを感じた。
『何か勘違いしてない?
別に私は誰も処罰しないわよ。
あの二人なら大丈夫。
こっちにいらっしゃい。』
そういうとシャナは、はぁ…と急に表紙抜けしたように間の抜けた顔をした。
『何してるの、こっちよ。』
ちょっと話をしようと、シャナを執務室に案内する。
『で、資格だけどね。
あるわよ、あなたにはある。』
とりあえずまずはこれから。
この子、意外と自覚無いみたい。 紅様に心底愛されている自覚が。
『でも…私は…』
シャナは下ばかり見ている。
『ゼロは策士よ、勧誘とか上手いから世間の耐性が無いエルフさんに断り切れるわけないわ。』
実際ゼロの毒牙(?)にかかったメイドは数知れない。 ただ、あのスーが紅館に来てからは一度も無かったのだが……
『でも…』
(むぅ…ウジウジしないの!)
『重要なのは何よ?
今でしょう?
あなたは反省した。 それで良いじゃない。
もう二度と紅様以外に体を委ねない。 そう思ったんでしょう?』
シャナは一度だけ顔を上げて、私を見るがまた頷き、下を見た。


紅館の花達の最初へ 紅館の花達 65 紅館の花達 67 紅館の花達の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前