Ⅵ 涼やかな少女-1
・・・涼やかな少女・・・
「時」は再び過去に戻り・・・
2004年9月6日 月曜日 晴れ 16時15分
いつものように、スイミングクラブで軽く汗を流してから市立図書館に立ち寄る。
千章にとって他人と時間やスペースを共有しながらも、心安らげる数少ない場所のひとつである。
なにより本を読まない人間との価値観の共有は不可能だとさえ千章は思っている。
そう言う点において、互いに言葉を交わす事も無く面識も無いが、おそらく価値観や考え方が近い人間たちであろう事が千章を安心させ心地良くさせるのかもしれない。
そして、後に最初のターゲットとなる少女と出逢う事になる。
長い黒髪に整った顔立ちで、八頭身を思わせる均整のとれた理想のスタイルはまるでモデルを想わせる。
そのスタイル故に実際の身長以上の印象を受けるが、概ねの目測では身長165センチ弱程度であろう。
平凡なブレザータイプの制服を校則通り着用していてもセンス良く感じてしまうほどだ。
なにより千章が魅かれたのが、少女から香り立つ爽やかな清潔感であった。
こんな少女を抱いてみたい。
偶然の出逢いであるが、ひと目で最初のターゲットとなる。
問題はこの少女が計画に適合するかどうかである。
図書館を出る少女の後を追う。
幸いな事に図書館から徒歩で移動した、ほど近い場所に少女の住居はあった。
4階建ての集合住宅の一角、1階が少女の住居である。
少女は鞄から鍵を取り出すと、解錠し無言で室内に消える。
それより3ヶ月間、千章は入念に少女とその家族に対する調査を勧めた。
当初は幾人もの少女の中から最初のターゲットを決めるつもりでいたが、ひと目見た時から決まってしまっていた。
計画立案においては、出来うる限りの過去同様の事件手口等を調べ参考とした。
事件として立件されている以上、失敗事案ではあるが途中まで成功していればその点を、失敗したのであればその点を修正し参考とした。
当然ではあるが少女とその家族の情報収集に余念はなかった。
・・・美しい少女・・・
基本情報
福井美涼（ふくいみすず）・・・公立の共学校であるM丘高校2年生17歳。
身長163 B78 W57 H83（いずれも目測による推測数値）1987年8月28日生 乙女座 A型
その美しい容姿に反して現在異性の友人は居ない。
クラス委員ではあるが部活動の類には入部しておらず、帰宅時間はほぼ概ね安定している。（通学方法は徒歩で15分程度）
住居は県営の雇用促進住宅C棟106号室で、家族構成は本人と母親の二人暮らし。
母親はスーパー○○にて、週5日勤務8時間シフト制勤務で働いている。
等々
基本計画
日時場所・・・土曜日、美涼帰宅直後から母親のパート帰宅時間まで自宅アパートにて。
侵入方法・・・母親宛ての宅配便業者を装い侵入。※宅配を装った段ボール箱内に必要な道具を入れて持ち込む。
口止方法・・・レイプ行為を撮影しそれを持って口止め材料とする。更にその後の継 続的なセックス強要の材料ともする。
注意点
レイプの足跡を残さず周囲に気取られる様に注意する。
その為には、行為後の美涼に対する対応が大きな部分をしめてくる。
※いくら本人に口止めしても、乱暴された様な状況や痕跡を残してしまい、家族や周囲に気取られては何の意味も無くなる点。
以上が極々基本的な計画の骨格となり、後はそれをどの様な精度にて実行出来るかにかかってくる。
計画と修正を繰り返しつつ、必要なものは買い揃えていった。
全力をもって事に望むにあたり、準備と注力は怠らなかった。
そのひとつの象徴が、28歳より愛でていた愛車を手放した事である。
もちろん金銭的な理由では無い。
目立ちすぎる事が理由である。
これから自分が望む事にあたっても不向きである。
もっと移動時駐車時に、周囲に溶け込める様な車が必要であった。
どこにあっても違和感の無いそんな車が必要だった。
そんな中、計画実行にあたり好都合な点がいくつかあった。
住居が角部屋で1階であり周囲に音が伝わりにくい点。
計画実行時間帯に対面の部屋である105号室が不在の可能性が非常に高い点。
そして何より美涼自体がひとりでいる時間帯が非常に長い点である。
もちろん成功が絶対条件、難易度に対してのターゲットの魅力は絶大である。
ゲームでは無い、「セーブ」「コンティニュー」「リセット」も無い。
そして、いきなり「困難に打ち勝って」も急激に「レベル」が上がり自身の能力が上がる訳でも無い。
一度の「失敗」で全てが「終了」となる。
そう言った点でも、福井美涼は全ての条件を満たしていた。
そして何より初めてのターゲットに相応しい存在であった。