Ⅵ 涼やかな少女-2
・・・乙女座の少女・・・
見知らぬ男が自身に対する悪辣な計画を練っている中、魅惑の美少女は日常の学校生活を送っていた。
この日の帰宅後、悲劇が自身に襲い掛かるとは知らずに・・・
2004年12月11日 土曜日 曇り 早朝
「おはようございます」
生徒と教師たちの挨拶が繰り返される中、美涼は校門入口で幾人かの生徒と共にに登校してくる生徒ひとりひとりに明るい声をかける。
美涼の通う高校では、俗に言う「あいさつ運動」が行われていた。
それ自体は取り立てて珍しい光景では無く、良くある学校での日常風景である。
しかしその中でも「福井美涼」は、ひと際人目を惹きつける。
その美しい容姿はもちろんだが、クラス委員でもある事から解る通り人気を超えた人望もある。
登校してくる同級生はもちろん、上級生下級生の男女共に美涼の美しさに目を奪われる。
高校入学以来、何人もが交際を申し入れたが今日に至るまで首が縦に振られる事は無かった。
決して美涼が高飛車で全てを断っている訳では無い。
理由は単純明快、「多忙」だからである。
学業はもちろんだが、フルパートで働く母の為帰宅後家事を全般的に熟している。
唯一の楽しみが、下校途中時折立ち寄る図書館での読書くらいである。
故に高校2年生の美涼は男性経験は無いどころか、異性への興味も極端に希薄なところがあった。
美しく成長してはいたが、その精神構造の一部は欠落しているとも言えた。
それは美涼の父親が、病死した小学校低学年で停止していた。
ある週末に昼下がり、公園で父親と遊ぶ少女に美涼の目が奪われる。
羨ましい光景・・・
自分も父親に甘えてみたい・・・
頼りになる人間に依存したい・・・
自分を力強く支えて欲しい・・・
ほんの一瞬ではあるが、健気にふるまう美涼の心の奥底に潜む本音が現れる。
12月11日、計画実行の日。
美涼は予定通り、ほぼ11時30分に帰宅する。
あの時同様鞄から鍵を取り出し、解錠すると無言で室内に入る。
母親の帰宅時刻が、18時30分から19時前後。
買い物の有無により帰宅時間が若干振れる。
一方、美涼の帰宅時刻はほぼ一定である。
・・・犯される少女・・・
計画は美涼の帰宅とほぼ同時に始められた。
時刻は11時32分
帰宅した美涼の後を追う様に、宅配便業者を装い玄関のベルを鳴らす。
チェーンロック越しではあるが、ドアは開き制服姿の美涼が応対する。
荷物の大きさから言っても、チェーンロックを外さざろう得ないサイズを用意して来た。
受領印を求めると、ロックを外してドアを開ける。
荷物を運び入れながら玄関内に入る。
すかさず背中を向けた美涼のウエスト周辺、ブラウス越しにスタンガンの先端をあてがう。
青白い光が飛び散るが、慌てずに十数秒当て続ける。
崩れ落ちるようにうつ伏せで倒れこむと、肌を一部露出させ更にスタンガンの電流を流し続ける。
もちろんこれで人形の様に無抵抗になり、事が全て上手く運ぶ程甘く考えてはいない。
ここからが時間との勝負となり手際が問われる。
何度もイメージし練習を繰り返した事を思い出しながら作業に望む。
うつ伏せ状態の背後から馬乗りになると、ポケットから用意したストッキングで口に猿轡を咬ませる。
次いで両腕を後ろ手に縛り上げ、同様に両脚足首部と膝周辺部の二カ所をストッキングで固定する。
更に目隠しをし最後に両肘部も固定して終える。
モノの数十秒で少女を拘束する事に成功する。
最終目標を考えれば目隠しの必要は無いが、この場合は視力の感覚を奪う事が目的である。
玄関ドアのロックを確認した上で次の行動に移る。
まずはドアホンに残っている自分の画像を消去する。
美涼の部屋に宅配荷物を装った段ボール箱を持ち込む。
事前に部屋の見取り図は手に入れておいた為、おおよその見当はついていたが思った通りの配置であった。
ここで拘束した美涼が不要に暴れ物音を立てない様に、耳元で用意した台詞を落ち着いて囁く。
物取りを匂わせ、用が済めば解放される事を暗示させる。
視力が失われている事で抵抗力は大きく失われている。
美涼は身を守る様に丸まっている。
暫くはこれで時間が稼げる。
再び少女の部屋に入るとカーテンを閉め室内灯を点ける。
ここで持ち込んだ段ボールの荷を解く。
手際良く用意した三脚にビデオカメラ二組をセットする。
一台はベットを真横から全体が捉えられる様に、もう一台は足元からベット中心部を捉えられる様にセットする。
更に接写用に用意した三台目の動作を確認し全て録画を開始する。