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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第16話-19


“隼リーグ”後期・第2戦 法泉印大学 対 仁仙大学
【法泉大】|010|020|200|5|
【仁仙大】|200|100|200|5|

「ゲームセット!!!」
 その後、試合は両者ともに譲らず、引き分けに終わった。一時は2点を勝ち越しながら、勝ちきれなかったという点では、“後期日程”の初戦で敗れているだけに、法泉印大学にはダメージの残る“引き分け”といえる。
「もう一歩だったが……」
「土俵際で譲らないのは、さすが、法泉大というところだね」
 一方で、前期で敗北した相手に、主導権を握られつつも最終的には引き分けに持ち込んだ形の仁仙大学にとっては、価値のある“引き分け”となった。追いつかれ、逆転され、それでも引き分けに持ち込んだ粘り腰の展開は、これまでのチームにはなかったものだ。
「水野、よく投げたな!」
「ナイスピッチ、水野!」
 その粘りを生んだのは、福原をリリーフした葵の好投にあるといってよかった。
 これまでの試合では、1イニングしか投げていなかった葵だったが、初めてとなる2イニングスめの投球では、精緻なコントロールでベースを掠める“角度のあるストレート”と、蜂のように球威で鋭く突き刺してくる“快速球”を駆使して、相手のクリーンアップを三者凡退で終わらせ、結局、7人の打者に相対してひとりの出塁も許さなかった。
「今日の試合は、水野さまさまだったな」
 二階堂の言うように、打撃でも活躍した葵は、間違いなくこの試合の“MVP”と言って良かった。
「葵、肩と肘は、大丈夫かい?」
「はい」
 回を跨るロング・リリーフを、葵は初めてこなした。
「“キラービー”を、あんなに投げて……」
「そうしないと、抑えられないと思ったから」
 しかも、球威で相手を突き刺す“快速球”…誠治が“キラービー”と呼んだウィニング・ショットを、葵は連投していた。
 体のひねりと腕のしなりを一段階挙げることで、突き刺すような球威を生み出すその球は、当然ながら、葵の身体に大きな負担を与える。
「しっかり、クールダウンをするんだよ」
 アイシングを手伝いつつ、誠治がそのように心配するのも当然であった。
「誠治、水野、病院は今から行くのか?」
 ベンチの後片付けを終えてから、六文銭が二人に問いかけてきた。試合が終わった後、当日か、そうでなければ翌日に、それぞれの検診が主治医から義務付けられていることは、仁仙大学のメンバーたち皆が知っていることだった。
「それなら、タクシーを呼ぶが」
「そうですね…」
 誠治は本当なら、次の試合に行われる“双葉大学 対 櫻陽大学”の一戦は見ておきたかった。双葉大学は間違いなく、自分たちの目標に立ちはだかる“最大の壁”になるだろうし、櫻陽大学には新進気鋭の左腕・相模大介がいる。
 その両者がぶつかる試合に大きな関心があったが、“双葉大学”ひいては“草薙大和”という存在を、いたずらに葵に見せることは、誠治の中でためらいがあった。
「誠治さん、待って」
「?」
「わたしも、次の試合を見たいです」
「葵……」
 誠治を見る葵の瞳には、不安の色もあった。しかし、それと対峙しようという確かな意思も感じた。
「無理をしては、いけないよ」
「わかっています」
 葵が何かを乗り越えようとしていることは、そのはっきりとした頷きによって示されていた。


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