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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第16話-10


 既に触れたことだが…。
 “後期日程”は、“前期日程”がそのまま裏返った形で開催されるので、仁仙大学と法泉印大学は、それぞれ2戦目に対戦することになる。前期では“天王山”と言われた試合が、早くも行われるのだ。
 仁仙大学は初戦で対戦した城南第二大学に対して、6対1のスコアで快勝しており、幸先よく順当に1勝目を挙げていた。
 かたや、法泉印大学は、初戦の双葉大学に0対3で敗れている。総合優勝への足がかりを失わないためには、連敗は許されないところだ。
「この試合の結果は、リーグ戦に大きな影響が出るからな」
「そうね」
 雄太と品子のつぶやきは、試合を見ている全ての人たちの総意であった。
 この試合の後で対戦する、双葉大学と、櫻陽大学のメンバーたちだが、今は観客席に隣り合うようにして並んでいた。“東西交流戦”では、相模大介、仲里小次郎、御門一太郎と、同じチームになって戦うことがあったので、首脳陣同士、親しみのある慣れた空気を纏っている。
「天狼院先輩の後釜は、能面先輩か…。しかしまあ、でっかいよなぁ」
 結花と、航の、隣に座っている相模大介は、十人中十人がそう述べるであろう言葉を、能面が立つマウンドを見ながら口にしていた。
「二人とも、どうだったんよ」
「抑えられたわよ。ノーヒット」
「俺も、だ」
 前の試合で、両者ともに無安打に終わっている。負けん気のある結花は、その悔しさを蒸し返したようで、唇を尖らせつつ、相模の問いに答えていた。
「片瀬っちと、木戸っちが打てないなんてな。…でも、試合には、勝ったんだろ?」
 双葉大学が、前期優勝チームである法泉印大学に勝利を収めたことは、リーグ関係者の中ではなかなかにセンセーショナルなことであり、総合優勝を巡る戦いが混沌としてきたことを示すものとなっていた。
「左打ちのセンパイたちが、がんばってくれたから」
「まあ、右のスリークォーターとか、サイドハンドとかは、“左には弱い”って言うのは、定説だしな」
「相模クンも“左”なんだから、期待されるわよ。よく、見ときなさいよね」
「俺、打つほうはからっきしだしなぁ。左といえば、ウチには御門先輩がいるから、問題ないっしょ」
「他力本願ねえ」
 相模と結花が、妙に空気の合ったやり取りをしている。
「………」
 それを受けて、航は、いささか仏頂面になっている様子であった。さすがに、彼女のお尻をつねりはしないが、その分、やり場のないもやもやを解消しきれないのが、珍しくも今の表情になっているらしい。
「あと、聞いておきたいんだけど」
「なに?」
「二人ってば、付き合ってるよな?」
「「!?」」
 いきなり、野球と関係の無い話になって、結花も航も、息を呑んで瞠目した。
「な、なによ、いきなり」
「いやー、木戸っちがさ、片瀬っちと仲良く喋ってる俺のこと、面白くない顔で見てるからさぁ」
「う」
 軽い調子のようで、相模はなかなか目端が利いている。それを指摘された航は、結花の視線を避けるように、そっぽを向いた。
「でも片瀬っちは、前と違って余裕ある感じだから、こりゃ付き合ってるなと、わかっちゃうわけよ」
「そ、そう、なんだ」
 確かに、淡い想いを寄せるばかりだった頃は、航の一挙一動に何かと心を動かされた結花だったが、心も体も一緒になることが出来た今は、彼の傍にいる自分の姿が当然となっていて、それが相模の言うところの“余裕ある感じ”に見えるのだろう。
「木戸っち、安心していいぜ。俺、NTRの趣味ないし」
「べ、別に、俺は」
「そんな顔してちゃあ、説得力ナッシング」
「くっ……」
 翔によく似た雰囲気の相模に対して、航は悔しくも1本取られた自分を認めざるを得なかった。
「それに俺、カノジョいるしさ」
「へえ。相模クン、なかなか隅に置けないんだ」
「しかも、“城女”のおねーさま、よ」
 相模の“彼女”は、“城西女子大学(略して城女)”の女学生らしい。“お姉さま”ということは、交際している相手は年上なのだろう。
「普段はつんつんしてんだけど、可愛いトコ見せてくるから、これがまたたまんないんだよねぇ。あれよ、いわゆる“ツンデレ”ってやつ」
「ちょっと、のろけてんじゃないわよ」
「まったくだ。試合に集中するんだな」
「へいへい」
 そんな三人を含めた視線の先にあるグラウンドでは、第2戦にして後期戦における大きな“山場”というべき試合が、始まろうとしていた。


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