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雨のもたらすもの 〜Rain of Love〜
【青春 恋愛小説】

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雨のもたらすもの 〜Rain of Love〜-3

そういう状態を私や雄大の友達は“夫婦”とか言うけど。そんな二つ名で呼ばれるたび、私の心臓は高鳴るのだけど。
雄大はいつも平然とした様子で、『そんなんじゃねえよ』と言う。そんな言い方が私には、『こんなヤツのことなんて、何とも思ってない』と聞こえて、時々淋しい気分になってしまう。
前に雄大にカマをかけて、好きな人とか、聞いたこともある。その時だって、『サッカーが恋人』とか答えた。あまりにも定番な答えにはじめは笑ってしまったけど、後になってその言の葉は私の心に傷をつけた。
いつだってそう。サッカーには燃えるのに、恋愛にはポーカーフェイス。

──つい、思考の海に沈んでしまったようだ。
現実ではだんだんと雨脚が強くなり、グラウンドには所々小さい海が出来てきた。
このままだとホントに風邪になりかねないので、私は雄大のもとへ駆け足で歩を進めた、右手には傘を持ち。

雄大の頭上に傘を当てがう。突然雨が遮られたからか、驚いた様子で私を見る。
「おお、伊津美か」
「おお、じゃないよ。ビショ濡れじゃない」
制服のポケットからタオル地のハンカチを出す。
「もう〜、どうしてコンナになるまでここにいたのよ?」
聞きながら髪を拭いてあげる。
「いや、今日は濡れたい気分だったからさ」
「そんなこと言って。風邪引いたら元も子もないじゃない」
「ん、確かに」
そう言い、照れたような微笑を浮かべる雄大。少し童顔な雄大はこういう顔するとけっこうカワイイのだが、口に出すと怒るので言わない。
「練習は? 終わったの?」
「ああ、とりあえずコレを片付けて部室に入れておけば良いだけ」
 指さした先にはサッカーボール、ザッとみて20個ほど。
「そっか、じゃあ手伝ったげる」
早速近くにあったのを拾いあげる。
「そうすれば早く帰れるでしょ?」
と言って笑う。
「悪いな」
と一言呟き雄大も片付けを始めた。彼の耳はほんのり紅かった。


片付けが終わり、私は家路に就く。さっきと違うのは、帰る相手が雄大であることと、相合い傘になっていることだ。
「それにしても久しぶりだね、雨降るの」
「そう……だな、ここんとこ練習続いてたからな」
事実、朝の天気予報が言うことには、最近2週間ずっと雨が無かったそうだ。
「私は降らないでほしかったかな」
「え、なんで?」
「だって、降らなかったら雄大がこんな濡れることなんか無かったんだから」
私がそう言ってやると、バツが悪そうな顔をした。
「俺にとっては“恵みの雨”かな。部活が早めにきりあげられたからね。それに……」
急に歯切れが悪くなった。
「それに…、なに?」
先を促す。すると雄大の口を割って出てきたのはこんな言葉だった。
「──それに、伊津美とこうやって相合い傘で帰れたからな」
あまりにびっくりし言葉が出てこなくて、雄大を見つめる。
「何だよ、早く帰るんだろ? 行くぞ」
そう言った雄大は、これ以上ないくらいに真っ赤だった。
「雄大……、顔真っ赤だよ」
「お前も真っ赤だぞ」
私も知らず真っ赤になっていたらしい。そう言って顔を見合わせ、二人で笑いあった。


その後は私達の間にはこれといった会話は無かった。
でも、何となくだけど、雄大と心の底で繋がっているような、私の心はそんな仄かな、でも確かな暖かさを感じた。


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