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縄灯
【SM 官能小説】

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縄灯(後編)-8

すたすたと垂れてくる蝋涙は、まるで生きもののように私の秘肉を味わいつくし、舐め尽くし
鋭く尖った歯をたてながら、肉襞の奥をこじ開けながら滲み入っていく…。

熱蝋が私の性器に放った鋭い棘のような痛みとともに湧き出る欲情…どこまでも純粋な苦痛と
魔悦は、私の洞窟の奥底を焦がしながらも、膣穴を少しずつ押し広げる。縄で絞め上げられる
ことによって肉が裂け、秘所に滲み入る熱蝋の痛みが襞を爛れさせていく。棘のような痛みは
やがて蛇の鱗となり、鱗はやがて肉塊となり私の洞窟を充たしながらとぐろを巻き始める…。


「…もっと欲しいのか…」

キジマの瞳の中には、黄昏の光が暗鬱とした海に充ちるように濃厚な憂いを湛えていた。私の
沼底で、棘の蔓に縛られた卵巣が蕩けるように喘いでいる。

熱蝋で性器を責められながらも、私は肉体を戒める縄が堅固な鎌首をうねらせ、肉襞を縄の
ささくれ立った棘でえぐり、子宮にからまりながらとめどなく増殖していく幻覚に襲われた。

…もっと…もっと強く私の性を戒め、私の中の鬼を責めて欲しい…

どこまでもたどりつけなかった欲情の果てが、縄で縛られることによって純粋すぎるほどの
狂気を私に与える。そして陰部の肉を熱蝋で炙られ、掻き回される悦楽は、淫汁を私の中から
止めどもなく搾り取り、私の化身である蒼い鬼の宴(うだげ)となって恍惚とした性の夢魔へ
と私を舞い上がらせていくのだった…。



病院の外には、どんよりとした雲が重く立ち籠めた空が拡がっている。私はバルコニーの手す
りに肘ををつき、遠い空に視線を向ける。

キジマに縛られることによって自分が果てていく愚かさとふたたび芽生え始めた狂気…
子宮が捩れるような性の眩惑…私は、閉じられたものが開かれ、見ようとしなかったものが
見え始めていたような気がした。


一ヶ月後、私は病院を退院すると、ふたたびキジマに会うためにあの場所を訪れた。
高い古塀で囲まれ、森閑とした樹木に包まれたあの屋敷…確かにこの場所だと思って訪れた場
所は、ただ雑草が生い茂った空き地だったのだ。

いや…間違いはなかった。確かにこの場所だったはずだ…。

路地裏を隈無く歩き続け、あの屋敷を探そうとするが、そんな屋敷はなかった。そんなはずは
ない…。私は一ヶ月前、この場所に建っていた屋敷を確かに訪れ、キジマと出会い、彼に縛ら
れたはずだった。


黄昏の光の中を乾いた風が吹き抜けていく。私は、ただ茫然とその場所に佇むばかりだった。
その空き地の片隅には、苔に覆われた古い墓があった。書かれた墓碑名は…木島重蔵と母の名
前が刻まれていた。

首筋を冷たいものが流れていくような気がした。私は茫然とその墓の前で遠くまどろむ記憶を
たぐり寄せる。しだいに深く斜めに差し込んできたオレンジ色の黄昏の光が、苔の生えた墓碑
銘を深くえぐり始める。


そのときだった…。



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