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勇気をもって!
【学園物 官能小説】

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勇気をもって!-5

 土曜日で学校は半日である。公立高は休みだが優希の学校は半日授業がある。
ふだんなら学校が終わって、昼食後図書館で勉強してから塾へ行く。講義をすべて受けると八時を過ぎる。そのまま帰れば九時頃家に着く。講師と話をしたりして遅くなることもたまにあるから十時くらいなら親も不審には思わない。それ以上は無理だ。だから、付き合うけれど遅くなるのは困るとなるべく平静を意識して言った。今日は塾を休むと付け加えた。
「そうよ。たまにはいいのよ」
里香は大人びた笑みを浮かべながらその場で男にメールを打った。

「制服でまずいんじゃない?」
「何言ってるの。だいじょうぶよ。夜中じゃないんだから」
他校の生徒が出入りしているのを見たことは何度もあるけれど、なにしろ名門女子高だから気になるのだ。
「図書館には行くわ」
夕方五時の待ち合わせが決まると優希は言った。
「あたしたちも行く」
仲間が増えて二人は満面の笑みを見合わせて頷き合った。


「もう来てるって」
メールが入って彼らはすでに盛り上がっているらしい。時間は少し早かったが図書館を後にした。
「遅くなれないわよ」
やや遅れて歩きながら優希は二人に念を押した。
「うん。九時ね」
「もう少し早い方がいいわ」
「わかってるって。きっと気持ちが変わるわよ」
(変わるって、どういうこと?)
自分がセックスをしてしまうってこと?

 優希は急に怖くなった。まさかとは思うが、仕組まれて乱暴されるのではないかと不安が過った。親友の二人がそんなことをするはずはない。だが相手はわからない。強引なことをしてくるかもしれない。
(でも、カラオケボックスだから……)
店には人もたくさんいるだろうし……。
気がつくと二人の背中が遠くなっていた。

 部屋に入るなり。里香と真美は笑いながら男とハイタッチをして優希を紹介した。
ソファの配置はコの字になっていてそれぞれに分かれて男が座っていた。カップルになろうということらしい。
 サラリーマンと聞いていたからスーツ姿と思っていたが、意外にもカジュアルな服装で大学生に見える。
 里香が左に座り、真美は右の男に寄り添った。正面にいる男が友人なのだ。

 優希は立ち尽くしたまま黙っていた。
「優希、座ったら?彼のとこ」
里香に促されて奥まった所に腰を下した。
「こんにちは。ユウキちゃんっていうんだ」
男は愛想よく挨拶して、
「片平です」と名乗った。

 里香の相手が鵜飼で佐々木が真美の『彼』。三人とも一見真面目そうに見える。言葉遣いも丁寧だし、優希はとりあえずほっとした。

 大学を出てサラリーマン一年生だという。
「F女子高って憧れだよね」
「ほんとなら話も出来ないよ。しかも可愛い子が三人も揃ってさ」
安堵した気持ちのせいか、見え透いたお世辞にも反発を感じなかった。
(悪い人たちじゃなさそう……)
気が楽になってきて体の硬さが取れてきた。

「何か歌おうよ」
佐々木がリモコンを手にしながら、鵜飼に、
「ドリンク持ってこいよ」と言った。
「あたしソーダがいい」
里香に続いて真美は、
「レモンティ」
優希に目が向けられ、彼女は笑って頷いた。
「同じでいい……」
 立ち上がった鵜飼が一人で出て行こうとしたので、優希は里香に声をかけた。
「一人じゃ大変じゃない?」
「大丈夫、トレーあるから。みんな歌ってて。いいから」
手を大仰に振った。


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