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ヒプノ・フラッシュ
【SF その他小説】

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ある殺人犯-2

被害者の主婦に対して密かに復縁を迫っていたということがわかったのだ。

それで重要参考人として取調べをすると簡単に自供した。

しかしそれからが大変だった。

犯行当時着た服や靴を提出させたが、服には返り血もなく、靴も現場に残った足跡と違っていた。

また凶器は洗って自分の台所に置いてあると自供したが、それらしい包丁には被害者の血の反応はなかった。

現場にのこされた上着には、何故か髪の毛一本も付着していなかった。

後でわかったことは、その上着は民家のもの干し場から盗まれたものだとわかった。

そして土足で足跡を残した靴も、その疑いがあることが分かった。

現物は処理されたろうけれど、恐らくサイズの違う他人の靴を盗んで履いたものと思われる。

実際現場の足跡は27cmだが、月島の靴のサイズは26,5cmだった。

胎児も含めて3人の尊い命を奪った月島は状況証拠と自供だけで犯人とされたが、その癖なんの物証も出て来なかったのだ。

市警の取調べ室で如月警視は月島徹の取調べの準備をしていた。

まだ取り調べまでは30分も時間があるが、連絡を間違えて早めに連れて来てしまったのだ。

「ここに来てもらって、すぐ取調べをしないのは悪いが準備の為あと30分ほど待ってもらいたい。

下川刑事、月島の座っている椅子の背が何かグラグラしているようだが、ちょっと見てやってくれないか?」

下川刑事は言われたように月島の背後に回ると椅子の背を軽く触った。

「特にこの程度なら大丈夫だと思うのですが……」

「待て、誰か来たようだ?」

「そ……そうですか? 私には何にも」

私は取り調べ室の外に待っていた。戸が開いたので入った。開けてくれたのは如月警視だ。

如月警視が体を避けると私の正面には驚いた顔した月島容疑者と下川刑事の顔があった。

そのときヒプノ・フラッシュが光った。

「あなたたちは2人とも時間が止まりました。

このタイムストップの間はあなた達は何も覚えていないし、体を動かすこともできません。

けれど、その間私のする質問には答えることができます。

あなたたちの時間が元通りに流れるのは私が足で床をドンと一回鳴らしたときです。

では月島さんに質問します。あなたは福山芳枝さんとその子どもを殺しましたか?」

「はい、私が殺しました」

「あなたは殺人の証拠を消しましたか?」

「はい」

「それらはどんなものですか?」

「ビニール製の上下と帽子や靴や手袋などと包丁と、家に入る道具類です」

「ビニール製の上下だって?!」

そのとき如月警視が声を上げた。けれど月島は私の声にしか反応しないよいうになっている。

「なぜビニール製の上下を使ったのですか? 詳しく教えてください」

私が如月警視の代わりに月島に聞いた。

「手袋もプラスチックグローブだし、足にもビニールカバーの上から靴を履いた。

初めから殺す積りだったから返り血を浴びても良いようにした。

盗んだ上着はその上から着て返り血を浴びた後、現場に脱ぎ捨てた。

その後風呂場でシャワーを浴びて血を流してから、庭に出てビニールを脱いだ。

脱いだものは用意したバッグに入れて、家の外に出たときに靴も履き替えた。

それから燃えるゴミの日にビニール類と靴を出した」

如月警視は舌打ちをした。

「そうかそんなことをしたのか。だから上着には毛髪一本も落ちていなかったのね。

向山さん、凶器のことを聞いてみてください」

私はゆっくり言った。

「月島さん、では凶器には何を使いましたか? 」

「普通の文化包丁だ。量販店で買ったから足がつかない」

「それをどうしましたか?」

「綺麗に洗ってからガムテープで巻いて燃えないゴミの日に他のガラクタと一緒に出した」

またしても如月警視の口惜しそうな唸り声が聞こえた。

「くそ……ずる賢い奴だ。

向山さん、侵入するときに使った道具について聞いて下さい。窓ガラスを切って中に入ったのですから」

「月島さん家に侵入する時の道具はどうしましたか?」

「合鍵は下水に捨てた」

「えっ?!」

如月警視は驚いた。

ガラス切りとかガムテープなどの道具で窓から侵入したのではなくて、合鍵を使って玄関から入ったというのだ。

 


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