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あいかわらずなボクら
【青春 恋愛小説】

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VS欲望-1

 


  ◇  ◇  ◇



いつなんて具体的な日にちは忘れてしまったけど、やたら風の強くて寒い日だったのだけは覚えている。


「はい、どうぞ」


郁美が、コーヒーの入ったマグカップを俺に差し出してきた。


「サンキュー」


俺はそれをテーブル越しに受け取り、何度か息を吹きかけ冷ましてから、カップに口をつけた。


挽き立ての豆の香ばしい匂いがふわっと広がり、心地よい苦味とまろやかな酸味がゆっくり喉に落ちていく。


かじかんだ指もマグカップを包み込むことで、ようやく動かしやすくなってきた。


その日は二人で街をブラブラしていたけど、あまりの寒さにどこか屋内に移動することに決め、ちょうど一番近くにあった郁美の家に初めておじゃますることになったのだ。


郁美の家は初めてということもあって、とても緊張していたが、郁美のお母さんは優しそうでしかも美人で、俺のことを快く迎え入れてくれたことが嬉しかった。


郁美の部屋は掃除もマメにやっているのかやけに小綺麗で、出窓に花なんか飾っていた。


散らかった俺の部屋とは全く違って、女らしくていい匂いがして、どこか俺をソワソワさせた。


郁美は自分の部屋に帰ってきてリラックスしたのか、ブレザーを脱いでハンガーにかけていた。


ブラウス姿になったその華奢な後ろ姿にドキッとさせられる。


だが、俺は郁美に対してはもう軽はずみに手を出すまい、と決めていた。


それは、以前ヤリ捨てしたことに対する戒めも当然あったが、ここで欲望に負けて郁美に手を出したら、よくわからない何かに責め立てられるような気がしてたからだ。


それが何なのかはわからないけど、例えるなら浮気をしてしまったときに恋人から責められるようなそんな感覚だと思う。


まあ、浮気の経験はないからあくまで予想だが。


でも、いま俺が付き合ってるのは郁美であり、そういうことをしても誰にも責め立てられるわけがない。


それなのに、俺が郁美に手を出してしまうと、何かを裏切ってしまうような気がしていたのはなぜだったんだろう。


考えれば考えるほど混乱してくるから、余計なことは考えないようにしよう。


そう決めると、郁美に気付かれないように両頬をパチパチ叩いた。


気を取り直した俺は、郁美が出してくれたクッキーやチョコレートをつまみながら、他愛もない話で笑い合っていた。


その時、ふと視界にあるものが入ってきた。



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