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あいかわらずなボクら
【青春 恋愛小説】

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VSおかん-3

「お見舞いに頂いたお菓子、早速いただくわね。わたし、ゼリーでいいかしら?」


石澤母はそう言って俺の向かい側に座り、コーヒーを一口飲んでからゼリーの蓋をベリッと剥がした。


鮮やかな赤い色のゼリーが顔を出す。


俺も小さく“いただきます”と頭を下げて、コーヒーカップにポーションミルクとスティックシュガーを半分入れてスプーンでかき混ぜた。


コーヒーの色が変わった所で、カップをソーサーからカチャリと小さな音を立てて持ち上げ、ゆっくり口に運ぶ。


小さめのコーヒーカップに、実質スプーン二杯分のインスタントコーヒーの粉が入った“うちのブレンド”はやけに味が濃かった。


「えーと、名前……」


俺が一口コーヒーを飲んだのを確かめてから、おもむろに石澤母が口を開いた。


「あ、すいません。ちゃんとご挨拶してなくて……。僕、土橋修って言います」


俺はまた、自分に対して心の中で舌打ちをした。


最初にちゃんと名前くらい名乗っておけ、俺のバカ。


「土橋くん……桃子とはいつからお付き合いしていたの? あの娘、全然言わないから知らなかったわ」


「……今年の4月からお付き合いさせてもらってます」


石澤母の不安そうな顔に、つられて俺の心臓も再びどんどん早くなっていく。


「あの娘、ちゃんとうまく付き合えてる?」


石澤母の言っている意味がわからなくて、俺は顔を上げて彼女の顔を見つめると。


「小さい頃、男の子にいじめられてた時があったから、あの娘は男の子に対して臆病な所があるの」


俺が質問の意味を問うのをわかっていたかのように、彼女は少し深刻な顔でそう言った。


石澤母の言葉に、思わず眉をひそめて視線を床に落とす。


男が苦手なのは知っていたが、いじめられていたっていうのは初耳だった。


「お友達も可愛い娘が多かったから、余計引き立て役みたいになってばかりで、そういう小さなことの積み重ねで、自分に自信がなくなってしまったと思うのよね」


ゼリーを一口だけ食べてから、淋しげに俯く石澤母の言葉に、俺はなんと返せばいいのかわからずに黙り込んでしまった。



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