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あいかわらずなボクら
【青春 恋愛小説】

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VSおかん-2

「ごめんなさいねえ。わたし、紅茶を飲むことが多いからコーヒー淹れるのはちょっと下手なんだけど」


石澤母がそう言うと、紅茶を選ばなかった自分に心の中で舌打ちした。


「あ、紅茶でも……大丈夫です」


「ううん、いいのいいの。うちのブレンド、ぜひ召し上がって」


石澤母はニッコリ笑って、カチャカチャとコーヒーカップを用意し始めた。


召し上がるなんて、俺の日常生活ではあまり耳にしない言葉をサラリと使う石澤母が意外で、若干驚きの目を彼女に向けた。


しかも、“うちのブレンド”ときたもんだ。


いろんな豆を組み合わせ、試行錯誤を重ねて自分好みのコーヒーを作り上げるという、コーヒー通の話をテレビで観たことあるが、もしかして石澤母はこれに当てはまっているかもしれない。


とにかく、謙遜してはいるけど、コーヒーにまでこだわりがあるってことがなんとなく伝わってきた。


俺ん家なんてインスタントコーヒーしか飲まないってのに。


可愛らしい庭と、こだわりを感じられるリビングと、オリジナルブレンドが入れられるであろう、高そうなカップとソーサーが、石澤母を二割増で上品なお母さんに見せていた。


そのせいか、俺の緊張感は次第に高まっていき、止めたはずの貧乏ゆすりを無意識のうちにしてしまっていた。


まずは目を閉じて深呼吸だ。


落ち着け、俺。


早鐘を打ち鳴らす心臓を宥めるように、胸に手を置いて何度か深呼吸を繰り返し、息を整える。


頃合いを見計らって目を開けてから、ゆっくりカウンターキッチンの中にいる石澤母の方を見やると、思わず俺はハッと息を呑んだ。


石澤母は、インスタントコーヒーのGOLDBLENDとMAXIMの粉をスプーンですくい取って、コーヒーカップの中に入れている。


……“うちのブレンド”って、そういう意味だったのか。


俺はコーヒーにそんなに詳しいわけじゃないけど、インスタントコーヒーなら別に無理して混ぜ合わさなくてもいいような気がする。


ポットからジャーッとお湯を注ぎ、コーヒーカップを少し揺らしただけで、“うちのブレンド”は完成したらしい。


石澤母はコーヒーカップを二つと、先ほど俺達が買ったゼリーとプリンを一つずつと、お茶請けとして器に綺麗に並べられた煎餅をトレイに乗せて、俺の元へ歩いてきた。



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