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口伝つちのこ異聞
【その他 官能小説】

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口伝つちのこ異聞-3

 ある日、トメという醜女が山菜採りに山へ入った。歩くうち、開けた草地に出たところでぎょっとして足を竦ませた。
(蛇?)
よく見ると人が寝ているのだった。
(ハツの倅…)
トメが驚いたのは『人』がいたからではない。その股間から伸びた『マラ』にびっくりしたのである。まっ先に目に入ったのはそれであった。

 トメは三十路を越えて独り身だったが、生娘ではない。器量が悪いと嫁の口もなく、買い手もつかず、下女のように一生働いて自分の食いぶちを賄うしか方法はない。そんな境遇の女が村には何人かいた。彼女たちは盛りを迎えても相手がいないのだが、ときおり他家の男が近寄ってきて、尻を摩って藪に連れ込まれることがある。女房が月の物で交われない時に慰み物にするのである。哀しいことに彼女たちはそれでも嬉しかった。男は余計なことはせず、ただ押し込んで道具のように使うだけだった。だからトメも何人かの男の一物は目にしている。ところが、
(これは……)
褌からはみ出た物は尺はありそうだった。 
(まるでネズミを呑んだ青大将だ…)
ごくりと唾を飲み込むと、ホトがじわっと濡れてきた。

 近寄ると、男は眩しそうに薄目を開けた。トメは欲情を制御出来なかった。
「あんた、ハツさんの倅か?」
ハツのことは子供の頃から耳にしている。男は寝たまま顎で返事をした。

 跪いて改めて一物を眺めた。見ているだけで腰が抜けてしまいそうな大きさである。
「何してる、昼寝か?」
男はまた顎を動かした。
「あのな、今度卵持ってきてやる。ぼた餅も。だから、じっとしてろ、な」
恐る恐るマラを握った。根元の辺りはひと握りでは指先が届かない。
「あ……」
その時、むくむくと動き出したマラはあっという間に天に向かってそそり立った。たまげて思わず手を離したトメのホトから溢れた淫水が尻の針穴まで伝い流れていった。

「後生だ、おらに貸してくれ」
言い終わらぬうちに跨って、当たりをつけると腰を落とした。
(きつい…裂けそう…)
そう感じながらも痛みより目が眩む快感の方が勝っていた。
 胎内の奥にずんと突き当たる。いっぱいに押し広げられたところを触ってみると、マラは入り切っていない。これ以上は無理だった。
 トメは激しく喘ぎながら屈伸して声を上げた。
 引き抜いて仰向けに寝転んで一物を見ると濡れ光ってぐんぐんとしなっている。
 トメはそれから三度達して足元をふらつかせながら帰った。巨大なマラはまだ隆々としていた。

 村に戻った彼女は同じ境遇のサナエとトキにこの話をした。そして翌日、三人は沢山の食べ物を担いで巨根の元を訪れた。
 寝そべったまま餅を食らう男に跨って、三人は代わる代わる差し込んで狂喜乱舞した。
「おお、すげえ、おお、すげえ」

 それぞれ気をやった後、トメが両手でマラを扱いてみると男が初めて唸った。そして見上げるほどに精水を噴き上げた。
「おお!」
揃って昂奮の声を上げて見守っていると、いったん瓜のように縮んだ後、すぐにむくっと勃ち上がってきた。
「これはまた、なんてことだ」
「これならいつでもできるぞ」
「もう他の男はいらぬわ」
3人は小躍りして歓んだ。

 それからしばらくして、ハツの家の方には鹿を呑み込むほどの蛇に似た化け物がいると噂が立った。3人が申し合わせたのかどうか不明だが、自分たちだけの愉しみを守りたい想いが人を遠ざける作り話を生んだのかもしれない。

 老婆はいったん言葉を切ってから、
「気味の悪い話なんですが、続きがありまして…」
 その後、まぐわいを拒む女たちに不審を抱いた男たちが、連れ立って山に入る女等の後を付けて事の次第を知った。そして歪んだ嫉妬に燃えた彼らの手によってハツの倅は殺され、土中に埋められてしまう。

 ところが女たちは相も変わらず山行を止めない。おかしいと思った男がふたたび後を追うと、女たちは倅を葬った土饅頭の周りに輪を作って餅や干し柿などを供えて拝み始めた。男は間もなく恐怖に戦き、半狂乱になって駆け戻った。
 何を見たのか。女たちが一心不乱に拝むうち、土の中からは巨大なマラがタケノコのように突き出てきたのだった。女たちはそこに跨ると尻を落とし、いとおしむように交合した。

 「こんな話でな。大人だけに伝っている話で……」
「へえ…それは…。子供には話せないことですね…」
私が頷いていると、老婆はいっそう体を屈めて、声をひそめた。

「実は、お願いがありまして、無理なら忘れてもらいたのですが…」
真顔なので、心持ち私も顔を寄せた。
 話を聞いて耳を疑った。老婆の顔をまじまじと見つめた。孫の嫁を慰めてくれないかというのである。隣室の気配を窺った。布団を敷きにいったきり戻ってこないのは隣にいるのだろうか。
「あの娘も淋しいはずです。ここへ来てから一歩も村を出ていない。こんな婆でも男を知った女の体の切なさはよく憶えております。だからといって、誰にでも頼めることではないので……」
私が口が固く、信頼できそうだというのである。

「しかし…」と言いかけて、言葉が続かない。
 据え膳ーーといっていいのか、とはいえ、そんなうまい話に出合ったことがないので何と答えていいか分からない。それに話の出所が祖母からなのだ。
 私はようやく、
「ですが、ご本人のお気持ちが…」
濁しながら迷いを伝えた。
「ご心配には及びません。確かめてあります。本人の望みでもあります。恥をかかせることはありません」
それだけ言うと、立ち上がって土間に下りた。
「あとは頼みましたよ」
奥から女の返事が聞こえた。


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