投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 865 『STRIKE!!』 867 『STRIKE!!』の最後へ

『SWING UP!!』第14話-23

「や、大和……」
 もし、このトライアウトに参加するというのなら、大学を本年度限りで中退することが前提になるのである。態度には出さないが、桜子は明らかに動揺していた。
「壬生さんは、こうも言っていたんだ」
 大和は、自分が聞かされた言葉を、そのまま桜子に伝える。
『…お前さんがあと2年、“隼リーグ”で投げ続けたとしたら、ドラフトにかかる確率は、おそらくゼロだ。だが、この“四国・ウィークエンドリーグ”に参加すれば、ドラフト候補として、間違いなくリストアップされる資質はある』
 “四国・ウィークエンドリーグ”は、当然ながら硬式野球である。軟式野球でこのまま2年を費やすよりも、硬式野球の世界に戻り1年を過ごした方が、日本プロ野球リーグに所属する球団の、スカウトからの注目度は全く違う、と、壬生は言っていた。
 そもそも、“四国・ウィークエンドリーグ”には、全球団からのスカウトが必ず張り付いている。スカウトの目が光る中で、いつも試合をすることになるのだから、それも当然といえよう。
『もちろん、お前さんの実力次第だというのは、変わらないがな』
 “四国・ウィークエンドリーグ”での1年を選択したとしても、大和の実力がそれに伴わなければ、意味のない話である。そもそも、トライアウトに合格しなければ、話そのものが始まらない。
「大和、は、どうする、の?」
 桜子は、喉の渇きを覚えつつ、喘ぐように言った。その返答次第では、桜子は、重大な決断を強いられることになる。それが、胸の動悸を激しくして、息苦しさとなって、桜子の心を揺さぶり続けていた。
「正直に言うと、迷っている」
 そして、大和もまた、その表情に深い懊悩を刻んでいた。
「決められないで、いるんだ」
 そういう彼の顔は、とても苦しげであった。
「………」
 大和に浮かぶ苦悩の色は、様々な想いに占められているからだろう。一度は諦めていた“プロ野球選手”への道のりが開きかかっている好機だが、それはしかし、自分を復活に導いてくれた環境を、かなぐり捨てなければならない。
 大学を中退する、ということは、軟式野球部とも離れることを意味する。それはつまり、桜子と一緒に野球をすることができなくなる、ということだ。自分をエースとして認めれくれたチームの皆に、“背を向ける”ということなのだ。
(それは、許されることなのか……?)
 大和の苦悩は、その一点にあった。
「みんなを……桜子を、裏切ることになるんじゃないかって……」


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 865 『STRIKE!!』 867 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前