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三叉路 〜three roads〜
【学園物 恋愛小説】

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-5

「……でも、悔しいなあ。先越されちゃったか」


歩仁内くんは呑気に髪の毛を掻いてハハハと小さく笑った。


そんな仕草も、私には胸を締め付けられそうになる。


同時に、今まで私を元気づけてくれたり、優しく笑いかけてくれたり、照れたように「遊びにいかない?」と誘ってくれた横顔が脳裏に浮かんできた。


「ごめんなさい」という言葉では片付けられないほど、申し訳ない気持ちがこみ上げてくる。


歩仁内くんは、ジワリと涙がこぼれそうになっている私に優しく微笑み、


「ま、いいや。でもクラスには遊びに行くからよろしくね」


と、わりとあっさりした口調で、私の頭をポンと叩いた。


そんな彼の様子に、土橋くんは眉をピクリと動かして、


「歩仁内、お前人の話聞いてた?」


と言い、ジロリと彼を睨みつけた。


心なしか、私の肩に置かれた手に力が込められる。


歩仁内くんはキョトンとした顔で、


「聞いてたよ。別にいいじゃん、遊びに行くくらい。






おれの彼女も桃子ちゃんと同じクラスなんだし」


と、言った。






…………彼女?


しれっと言い放った歩仁内くんの言葉に、沙織も土橋くんも、そして私も、自分の耳を疑ったかのように眉をひそめ、ニコニコ笑う彼を凝視していた。





「か、彼女って……」


口を開けたまま言葉を出せない私と土橋くんの代わりに、沙織がゆっくり口を開いた。


「うん、補習の時に告白してOKもらったんだ。だから桃子ちゃんには早く報告したくて彼女も含めて一緒に遊ぼうって誘うつもりだったんだけどね、はしゃぎすぎてうっかり忘れてたんだ。

でも、おれがこうやってはしゃいでる間に、まさか桃子ちゃんまで土橋とくっついてるとはね。“報告が”すっかり先越されちゃったよ」


「……そういう意味だったの」


「そう。あ、ちょうどいいとこに来た! おーい!」


歩仁内くんは誰かを見つけると、大きな声で手招きしながら呼び寄せた。


私達三人は歩仁内くんの視線の先の方を見やると、見慣れた姿がこちらに駆け寄ってきた。


眼鏡をかけたおとなしくて優しい女の子。


一年生の時に同じクラスで仲の良かった女の子。


そして二年生の時は土橋くんと同じクラスだった女の子。


「……江里子」


「……本間」


私と土橋くんはほぼ同時にボソッと言葉を発した。


歩仁内くんに呼ばれた江里子は、顔を赤くしながらおずおずと彼の隣に控えめに立って小さく頭を下げた。


「じゃあ、改めて紹介するね。おれの彼女の本間江里子さん!」


得意気に江里子の肩に手を乗せる歩仁内くんの笑顔は、どことなくしてやったりというような意地悪な笑顔に見えた。



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