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三叉路 〜three roads〜
【学園物 恋愛小説】

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-4

「あのね、歩仁……」


「歩仁内」


私の言葉を少し不機嫌そうな低い声が遮った。


ハッと後ろを振り返ると、土橋くんがいつもの愛想のない顔で突っ立っていた。


彼の顔を見ると、昨日の出来事が一気にフラッシュバックして、瞬時に顔が真っ赤になる。


沙織と歩仁内くんは、私と土橋くんが口をきいていない状態だと思っているはずだから、彼が現れたことに当然ながら驚いていた。


ただ二人の驚き方は対照的であり、沙織は、目を見開いて露骨に驚いた表情のまま固まっていて、歩仁内くんは一瞬大きく目を見開いたただけで、すぐにキョトンとした顔で土橋くんを見つめていた。


「おう、どうした?」


そして歩仁内くんは、誰にでも向ける人懐っこい笑顔を、すぐさま彼にも惜しみなく向けた。


土橋くんは私の横に立って、肩にポンと手を置くと、


「わりいけど、コイツは俺のだから、あまり馴れ馴れしくすんのは遠慮してな」


と、言ってニヤリと笑った。


「…………!」


沙織は悲鳴を飲み込むように両手を口に当てていた。


彼の言葉に、身体がカッと熱くなって汗が噴き出してきた。


ヤバい、嬉し過ぎて顔がにやけてくる。


「……そうなの?」


歩仁内くんが赤くなった私の顔を覗き込んでくる。


「私……昨日土橋くんに告白したの」


嬉しい反面、歩仁内くんの顔が罪悪感でまともに見れない。


私は俯いて現実逃避をするかのように、自分のローファーに目を落とした。


穴を掘って逃げ出すかのようにローファーの爪先をグリグリするが、乾いたアスファルトの前ではそんな行為も何の意味も持たなかった。


土橋くんが言ってくれた言葉は嬉しいけれど、あれだけ私の支えになってくれた歩仁内くんの傷つく顔は、やっぱり見たくない。


そう思っていると、


「……そっかあ、よかったね!」


と、存外明るい彼の声が聞こえてきたので、私は思わず視線を歩仁内くんに向けた。



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