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恋する気持ち
【学園物 官能小説】

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恋する気持ち-7

卒業式が終わり、最後のホームルームが始まろうとしている教室。
見慣れたはずの光景なのに、どこかいつもとは違っていて。
笑っているのに、寂しくて。

…窓際、前から二列目。
春の陽射しの中に、阿川の姿。

(もう、会えない)

だから、目に焼き付けておくんだ。
さらり、と零れる黒髪も。
日に透ける、白い肌も。
照れたように笑う――大好きだったその、笑顔も。


「おーい、配布物あるから教員室に取りに来てくれ〜!日直…っても卒業式だから…じゃあ、出席番号1番頼むぞ〜」
「あ、私…」
廊下から顔を出す担任の理不尽な人選に当選したのは、阿川だった。
「お〜、阿川かぁ…女子一人じゃ厳しいな。誰かもう一人…」
「先生!!女子には優しくがモットーの水沢くんがお手伝いします!」
(……はい?)
俺はそんなモットーに覚えがねぇぞと振り返れば、声の主である泰臣が、いつになく真剣な顔をして俺を見ていた。
「…先生〜、俺は時給高いっすよ」
「校内でバイトは禁止だから、俺の愛をくれてやる。…っと、体育館寄らなきゃならないから、お前ら先に教員室行っててくれ!」

話しやすくて兄さんみたいだった担任と、いつものように軽いやり取りを交わしながら、俺は、阿川の後について教室を出る。
後ろ手にドアを閉めながら、一瞬だけ泰臣と目が合った。
(…わかってるよ)
これは、あいつなりの俺へのメッセージなんだろうな。
ケジメつけてこいっていう…。
だって、阿川と過ごしたこの7年間の俺を、常に間近で見てきたのは泰臣だったんだから。
(ありがとな)
お節介な親友へ、心の中で感謝した。


西校舎にある教員室への道のりを、こんなにも遠く感じたことはないっていうくらい緊張しながら、俺は、先を歩く阿川から微妙な距離を保ってその後ろにいた。
特別教室が並ぶ西校舎は、卒業式の今日に限っては使用されることがないのか静まり返っていて、一般教室が並ぶ中央校舎と東校舎の喧騒が遠くに聞こえている。

…今なら、言えるだろうか。
ずっと、大切にしてきたこの想いを。
俺は、お前を――…。

「直樹」
「ぅえっ!?」

突然。
前を歩いていた阿川の足が止まった。
急に呼び掛けられた俺も、軽く宙に浮くほどびっくりしつつ、合わせてその場に立ち止まる。
(…どんだけビビりだよ、俺)
「なんだよ?」
蚤の心臓並みの自分に突っ込みいれながら、それでも、表向きは至って冷静な振りを装って黙ったままの阿川に声を掛ける。
でも。
阿川は、振り向かない。
(………?)
ごく自然に、俺は廊下の壁を見つめたままの阿川の隣まで歩を進めた。
「お前、何見て…」

(―――え、これって…)

「直樹だよ」
ようやく、阿川が振り向いた。
ふわり、長い髪が揺れる。
「全国大会一回戦。直樹の、最後の試合」

そこにあったのは、不覚にも俺が試合当日に捻挫してぼろ負けをした、あの日の写真パネルだった。
曲がりなりにも全国大会出場ということで、学校側が記念に作製してくれたっていうのは聞いてたけど…。
「こんなところに飾ってあったんだ。俺、本人なのに全く知らなかった」



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