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恋する気持ち
【学園物 官能小説】

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恋する気持ち-4

転校早々の騒動。
その時に見せた正当な強さと凛とした雰囲気によって、阿川には早速あだ名がついた。

『燈子女史』

大人びた雰囲気に憧れるのか、すぐさま彼女はクラスの女子から頼られる存在となり、男子からは恐怖と羨望を持って見つめられる存在となった。
そして、俺は――…。


「直樹!あんたまた牛乳全部飲んじゃったの!?お姉ちゃんの分、残しておきなって言ったでしょ!」
「うるせーっ!俺は、早く大人になるんだーっ!」
かぁちゃんとのこんなやり取りが日常茶飯事になるくらい、牛乳やらカルシウムやらを摂りまくっていた。
かぁちゃんが作ってた何とか海ヨーグルトも、勝手に全部食った。
乳製品は、身長を伸ばすと聞いたからだ。
…かぁちゃん、ヨーグルトの作り方間違えちゃったみたいで、その後3日間、俺は下痢に苦しんだけれど。

『大人になれば、わかるわよ』

あの日の阿川の声が、耳の中でこだまする。
初恋は、確かなカタチとなって俺の中に在った。

早く大きくなりたい。
大人になりたい。
そうしたら、今はチビでガキな俺だけど、きっと、阿川と釣り合うはずだから。
同じものを見られるはずだから。
だから…。


―――そうやって。
俺の前を涼やかに歩き続ける阿川を追いかけ、追い続け。
同級生ほぼ全員が、小学校の隣に建つ中学校へ進学した時はまだ良しとして。

中学三年の冬。
その頃には、かぁちゃんの何とか海ヨーグルトのおかげか牛乳様の効果か、身長に限っては阿川を追い越していたけれど、成績ではまだまだとんでもない距離があった当時の俺。
それでも、学年トップの阿川と同じ高校に行きたくて、俺は、毎日半泣きしながら死に物狂いで勉強して。
でも、僅かに偏差値が届かなかった最終段階。
一途な片想いにも終止符を打たなきゃと覚悟を決めた。

――ところが。
頑張った俺に、奇跡が起きる。
なぜか、阿川が受験する学校のランクをひとつ落としたんだ。
おかげで、めでたく高校も同級生!!
…俺ってば、ここまでくるとヤバくねぇ?
ストーカーっぽくねぇ?
思わず自分に突っ込み入れつつも、心の奥にしまい込まずにすんだ初恋を、その後も俺は大切に育ててきたんだ。

でも、三年間の高校生活は、阿川との距離が最も遠退いてしまった年月でもあった。
小学校からの友達(阿川にとっては…)だからか、ある程度は親しい間柄だったけれど、あいつは、その頭の良さにより二年生の時からずっと生徒会役員だったし、俺は俺で、かぁちゃんのパワーというか怨念?が詰まった何とか海ヨーグルトや牛乳様の効き目が最大限に発揮され、おかげで身長は180pを越え、バスケ部のエースとして県大会で優勝。
嬉しい…けど、ガキの頃のように阿川の後をくっついて遊んでいられるような時間は少なくなっていった。
…まぁ、この年で、このでかさで女の後ろくっついて回ってたら、それこそ犯罪だけどな。

おまけに、華々しく進出を決めた全国大会は、当日の朝に駅で転んで捻挫。
何とか試合には出たものの、当然のことながら痛みをごまかして通用するような相手ではなく、チームは惨敗する。
これでも、かなり気合いを入れて頑張ってきた部活動のあっけない幕引きに、不甲斐なさと悔しさで、俺は、しばらく風化する化石のようなボロボロの毎日を送る日々だった。
辛うじて大学進学を決めることができたのは、今思えば本当に奇跡としか言いようがない。

そんな中、あまりにも魂の抜けた俺を見かねたのか、せめて阿川にはきちんと想いを伝えるように言ってきたのが、実は高校までも一緒で、おまけにクラスも同じという腐れ縁の泰臣だった。


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