投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

恋する気持ち
【学園物 官能小説】

恋する気持ちの最初へ 恋する気持ち 2 恋する気持ち 4 恋する気持ちの最後へ

恋する気持ち-3

「君島くん」
「は、はいぃ…」
よく通る、少し低めな転校生の声が辺りに響く。
呼び掛けられた相手は、蛇に睨まれた蛙の如く怯えまくりの泰臣。
(爆弾放り投げたのお前なんだから、泣くなっつーの…)
「あのね、君たちも昨日から6年生でしょ?最高学年になったんだから、下級生の模範にならなきゃいけないの」
「も、もは?」
「…お手本ってこと!それを、廊下に響き渡るような声でう●こだの何だの…みっともない。それに、女の子はいろいろあるの!この年にもなれば身体だって大人へと変わってきて、新しく変化だって起こるのよ。あんたたちのように、個室でう●こしてる子を冷やかすような男の子とは違うのよ!!」
「い、いろいろって…?」
(鼻水垂らすな、泰臣)
「――大人になれば、わかるわよ」

ニヤリと、転校生が笑みを浮かべた。
昨日読んだ漫画にあった『大胆不敵』って、こういうことを言うんだろうか。

「…それにね、私の名前は阿川燈子。昨日きちんと名乗ったじゃない。それなのにさっきから転校生、転校生って。それってすごく失礼だわ」
「だ、だって…」

「――ストップ、泰臣!」

涙と鼻水でグショグショになりながら、それでもまだ言い返そうとしている泰臣の肩に手を掛ける。
ちょっと驚いたように、こっちを見る転校生。
「…水沢くん」
「勝負あり。どう考えても、お前が悪いよ泰臣。…ごめんな、阿川」
「な、直樹のバカァ〜!」
(うぜぇ、こいつ)
いろいろ面倒くさいんで、もう駄々をこねる3歳児のようになっちゃってる泰臣を引きずり、歩き出す俺。

「――プッ!…アハハ…」
「へっ!?」
よろめきながら前へ進む俺の耳に、笑い声。
「…阿川?」
「ご、ごめんなさい。二人、本当に仲がいいのね」
振り向けばそこに、両手で口元を隠し笑う阿川がいた。
そして、そんな雰囲気につられたか、ようやく凍り付いていた周囲の空気も解凍されて。
ざわざわと昼休みの喧騒が戻った廊下に、タイミング良く午後の始業を知らせるチャイムの音が鳴り響いた。

「お〜い、授業始まるぞ!…なんだ、水沢と君島は?喧嘩かぁ?阿川も早く入れ〜!」
教室の入口で担任が呼んでる。
「は〜い!」
俺は、まだグズグズしてる泰臣を背負ってふらつきながら、一心不乱にひたすら教室を目指した。
そんな哀れな俺の脇を、軽やかに阿川が追い抜いて行く。

「…ありがとう、水沢くん」

春の風に揺れる長い髪を見つめながら、再び、俺の身体には電気が流れて。

そして、わかった。
これが、生まれて初めての『恋』なんだってことを。


恋する気持ちの最初へ 恋する気持ち 2 恋する気持ち 4 恋する気持ちの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前