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似顔絵師の恋
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2泊目-1

朝になって、部屋に行ってみると、すっかり元気になっていた。
若いだけに回復が早いと感心した。
私は朝御飯を作ってあげたが、普通のご飯をもりもり食べた。
そして、私の妻はどこにいるのかと聞いて来た。
「仏壇にいるよ。3年前に乳癌で死んだんだ。
それを言ってしまえば、君は泊まることなんかできないと思って黙っていた。
もう元気になったから汽車に乗って帰ることができるよ。
だが、もう少し待っていれば洗濯物が乾くんだけどな」
私はストーブを焚きっ放しにして干してあるシャツを指さした。
『はずき』は仏壇に行き、手を合わせて妻にも礼を言っていた。
私はカマをかけることにした。
「確か住まいはS市だったね。早く戻らないと彼氏が心配していると思うよ」
すると『はずき』は否定した。自分にはまだそういう相手はいないと。
私はほっとした。それが本当なら……と私は『はずき』の前に手をついた。
「同じS市に私の息子がいるんだ。真面目一本でいまだに彼女がいない。
もし良かったら会ってみてくれないかい?」
私は繰り返した。会ってみるだけで良い。気に入らなかったらそれで終わりで良い。
そして写真を見せた。小さい頃からの写真を見せながら、色々な思い出を聞かせた。
性格も欠点も隠さず言った。
『はずき』が困ったような顔をしていたので、私は頷いた。
「もう、忘れてくれ。ごめんごめん。
看病されたから借りを作ったような気になってるところへ、こんなこと頼むのは掟やぶりだね。
冗談、冗談だよ。それだけ君のことが気に入ったってことさ。
息子の嫁に欲しいなって、ふと思った。思っただけだから、本当にごめん」
すると、『はずき』は奇妙な反応を示した。
今の件、真剣に考えたいからもう一晩泊めてくれと言ったのだ。
それまでに返事をするとも。
「そんな……ここに泊まったことで負担に思ってそう言ってるなら、そんなことは構わないんだよ」
だが、『はずき』は首を横に振った。決してそんなことはないと。
『はずき』は昼ごはんは、簡単なものを作ってくれた。
そして、その一部を仏壇に供えていた。
そっと遠くからこっそり見ていると、さかんに妻の遺影に向かって頭を下げている。
それは感謝してるようにも見えたし、逆に謝っているようにも見えた。
『はずき』はさらに夕食も作ってくれた。
私はお風呂を焚いて1番風呂に入ってもらった。
もちろんバスタオルも着替えも娘の残して行ったものを使ってもらった。
 


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