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似顔絵師の恋
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1泊目-1

次の日は小雨模様で私は散歩に出なかった。だが祭りは行われていたようだ。

3日目は祭りも午前中で終わる。私はお金を持って散歩に行った。
例のところで『はずき』は客をとっていた。   
だがマスクをして、盛んに咳をしている。
ようやく親子連れの女の子の顔を描き終わったので近づいてみると、目が赤くなって朦朧としている。
「もしかしてインフルエンザかな? 私も1ヶ月前にかかったからわかるよ。」
そう言って私は声をかけた。
症状も同じだし、貰った薬も余っているから分けてあげると言った。
私の家は運河沿いにあるので、『はずき』に店をたたませて、家で休ませてあげることにした。
そういう親切の押し売りをしたのには、私には狙いがあったからである。
私ははっきり言って、『はずき』が気に入ってしまったのである。
『はずき』はその前にも私と口を利いているし、熱で朦朧としていたので、藁をもつかむ思いでついて来た。
私は、自分の娘が使っていた部屋に案内してベッドに寝かせた。
ベッドには目隠しのカーテンがついていて、それだと安心して着替えることもできる。
「娘が使っていたパジャマがある。着替えて寝ていなさい。私は妻に話して来る」
私はそういうと、仏間に行き線香を焚いて手を合わせた。
「そういう訳で、女の子を1人拾って来た。もしかして良い伴侶になるかもしれない。
だから、お前も応援してくれ」
私は自分が飲み残した薬と、簡単な食事を持って部屋に行った。
ベッドの枕元には小さな机と電気スタンドがあるので、そこで食事をさせた。
さすがに体が弱っていて、食欲がなかった。熱は39度あった。
私はベッドのそばでタオルを濡らして頭を冷やしてやった。
若い娘だからカーテンを閉めて顔を見ないようにし、手ぬぐいを何度も取りかえた。
文庫本を読みながら、2ページ進んだらタオルを取り換えるというペースで冷やした。
私は妻の看病を長い間したことがあるので、『ながら看病』が得意なのだ。
本を1冊読み終えた頃、『はずき』が汗をかいたようなので、娘の下着と取り返させた。
どうせ娘が使わずに残していったものだ。
それで多めに着替えの下着を用意してあげた。
「悪いけど、私はもう寝て来る。
今の汗で熱が少し下がったようだから、きっと朝までには元気になると思うよ。
ゆっくり休みなさい。汗をかいたら取り替えるように。
ここに水差しも置いたから、水分を取るように。
トイレはドアを出て左にあるから。
ほかに用事があったら部屋の戸を開けて呼んでくれれば良い」
『はずき』はだいぶ楽になったらしく盛んにお礼を言った。
妻にもお礼を言いたい素振りを見せたが、そんなことは気にしなくて良いと言った。

 


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