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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜双女花・返り咲き〜-2

『あらあら、ゼロさん。 どうかしました?』
泣き付くゼロの頭を撫でて、自分は座りゼロの目線に合わせた。
『うっうっ、スーちゃんがハイちゃんと浮気したぁ………』
『えっ…………? ハイネルシスが!?』
クリスは凄く驚いたようで、手を口に当てたまま固まってしまった。
(不味い……早く止めないと、どんどん誤解が広まっちゃう………)
ゼロに駆け寄って肩を掴む。
『ゼロ! 少しは私の話を聞きなさいよ!』
だが、ゼロは私の手を払い除け、泣いて赤くなっている目で私をキッと睨んだ。
『スーちゃん、いくらハイちゃんがカッコいいからって………ゼロゼロというものがありながら………うっうっ………』
あ……ヤバイ………また………
『スーちゃんのばかぁぁぁぁ!!!』
再び噴火したゼロはまた駆け出し、食堂を飛び出した。
『ゼロゼロだって浮気してやるぅぅぅぅ!!!』
廊下から、こんな叫びが聞こえてきた………
また、あとに残された私には、周囲の冷たい視線だけが残された…
『………ヒソヒソ………』
居心地が悪い………
あれから屋敷中を泣き回ったゼロのせいで、夕食までにはメイド達全員が誤解してしまったのだ。
『…………スーがねぇ………まぁ、釣り合わないってわけじゃないけど………』
『………でも、スーにはゼロがいるんでしょう? ………二股かしら………?』
メイド達は噂が好きだ。 特にこういう色事は直ぐに噂になる。
ましてや、女性達から高い人気があるハイネルシスに関係することなら尚更だ。
そして、誤解したままのゼロは私から離れた席に一人で座っていた。
(まったく………ゼロったら早とちりして………)
そして、もう一人誤解されているハイネルシスも、一人で夕食を取っていた。
だが、彼は元々周りを気にしないのか、いつもと変わらぬ様子で過ごしている。
『はぁ〜〜〜………』
溜め息を一つ、ガクリと力が抜けてテーブルに顔をつけた。
(なんだかなぁ………)
別にハイネルシスが悪いわけではない、むしろ、あの状況で受けとめて貰えなかったら痛くて大変だっただろう。
しかし、こうして私だけ疑いやらで苦労している中、ああも平然と過ごされると何故か腹がたつ……
『………ん?』
一人、食事も取らずにハイネルシスを見つめているメイドが居た。
クリスだった。
(クリス………どうしたのかな?)
何やら、悲しいような恨めしいような目で、真っ直ぐとハイネルシスを見ている。
(………!)
良く見ると、ハイネルシスはクリスの視線から逃れるように背を向けている。

(あの二人………なんかあるの?)
自室に戻った私は、う〜ん、と唸りながらベットに腰掛ける。 そういえば、クリスの部屋はどこにあるのだろうか?
メイド同士でも、交流が少ない人同士ではお互いの名前すら知らないこともある。
仕事場所が違ったり、種族が違ったり。 それでも部屋ぐらいは大概知っている。
しかし、思えばクリスと会うのはいつも食堂だけで、この水竜館で会ったことはない。
『う〜ん、謎ね。
………てか、ゼロ、遅いわね。』
隣のゼロのベットを見る。
ゼロが帰ってきたら、事情を話して誤解を解こうと思っていたのだが………
しかし、暫く待ってもゼロは帰ってこない。
『………………………』
立ち上がり、部屋を出た。
(まったく、どこに居るってのよ………)
もうメイド達は寝てしまったのか、廊下は静まりかえっていた。
とりあえず、一旦食堂に向かう。 まだゼロが残っているのかも知れない。


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