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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第13話-4


 岡崎は、大学の最終回生であり、昨年のうちに卒業に必要となる“必修科目”は、ほとんど修了させていた。後は、参加しているゼミに顔を出して、卒業論文を仕上げるだけである。
 進路としては、大学院への進学を最優先に考えているのだが、そのまま双葉大学の院に進むか、それとも、見聞を広げるために、他の大学院を選ぶか、まだ検討している段階だった。
「そろそろ、時間だから。行ってくるよ」
 それはそうとして、今日は、卒論講習のゼミが開講される日であり、午前の第二講義時間にあたるそれに参加するため、9時にはアパートを出る必要があった。
 そのまま、16時からの、軟式野球部での全体練習にも参加するから、ひとたびアパートを出れば、帰りは21時ごろになるだろう。
 その間、清子をひとりにしてしまうわけだが…。
「掃除して、晩ゴハン用意して、まっとるよ」
「なら、これを持っててくれ」
「あ……」
 いつも使用している、小さな野球ボールのキーホルダーがついている、アパートの鍵を清子に持たせた。自分はひとまず、マスターキーを持っておいて、卒論講習が終わった後の、練習が始まるまでの空いた時間に、新しいスペアキーを作ろうと考えていた。
「ええの…?」
「ああ」
「まーちゃん……ウチ……なんか、胸が、ときめいてもうた」
 合鍵をもらう、というシチュエーションは、乙女心を非常にくすぐるものだったらしい。
「清子…」
 清子が、大事そうに両手で、自分が持たせたアパートの鍵を手にして、そのまま胸に押し当てるという仕草を見せられれば、岡崎としても、高鳴りを憶えるのは当然であった。
 さすがに時間がなかったので、押し倒しはしなかったが、燻るものは感じていた。
「ん……まーちゃん…」
 だから、清子の唇を塞いで、たっぷりとその柔らかさを堪能することにした。
「じゃあ、行ってくるから」
「おいしいモン、用意して、まっとるよ」
「ああ」
 その会話たるや、まるで、新婚夫婦のようである。
 もう一度、今度は軽めのキスを交わして、岡崎は部屋を出た。扉が閉まるまで、手を振り続けていた清子は、本当に可愛かった。
「あ、おはようございます、岡崎さん」
 全く同じタイミングで、“よっくん”こと、隣人の八日市君が、アパートから出てきていた。鍵を閉めなかった様子を見ると、部屋には“となりのユミさん”こと、恋人の柏木由美がいるらしい。多分彼女も、扉が閉まるまで手を振っていたことだろう。
「おはよう、八日市君」
 笑顔も爽やかな“よっくん”こと八日市時矢は、先に触れたとおり、“城東体育大学”に通う二回生で、体操部に所属している、絵にかいたような“スポーツマン”である。とても、“裸エプロン”に欲情して、朝から恋人の“ユミさん”を突きまくって昇天させた“色男”には見えない。もっともそれは、岡崎にも当てはまることではあるが…。
「今日も、暑くなりそうですねぇ」
「そうだなぁ」
「そうめんが、食べたくなりますね」
「ああ。でも、俺は冷麦がいいかな」
 お互い、夕べから朝にかけて、熱い時間を過ごしたはずなのだが、それを億尾にも出さずに、暢気で爽やかな会話を交わしていた。
 タイプは違うが、まったくもって、似たもの同士だと、言えなくもない…。


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