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トリツキ
【ホラー 官能小説】

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3日目-7

しばらく休んでいると爺ちゃんに呼ばれた。
行ってみると庭に5人の女の人が並んでいた。殆ど17・8才〜21・2才のお姉さんたちだった。
爺ちゃんは疲れた顔をしていた。そして僕に言った。
「ミツル、3人目をこの人たちから選んでくれ。本人達は正直希望していない。それはお前を助けたくないというのではなくて、トリツキを見るのが怖いんだそうだ。お前が選んで、それでもし断られたらもう諦めるしかない」
とっても頼りない説明を受けて僕は一人ひとりの顔を見た。でも、僕と目を合わせると、みんなおずおずと目を伏せた。
結果誰を選んでも断られるのがはっきり分かった。爺ちゃんの説明だと、選ばれて断る場合、薄情な女だと村の衆から思われるらしい。
けれどもこの様子なら、その不名誉と引き換えても断りたいという感じが伝わってきた。
「爺ちゃん、良いよ、僕。誰かを選んでも結局その人が非難されるんじゃ可哀そうだよ。だから、この人たちに帰ってもらって」
「じゃあ、ミツルお前はどうするんだ?」
「包丁を持って布団に潜って待ってるよ。殺されるのがわかってるなら、僕だって抵抗してやる」
「わかった。そのときは爺ちゃんも加勢するぞ」
5人の女の人が帰った後に、眼鏡の女の子が爺ちゃんに挨拶して行った。
「それじゃあ、私はこれで帰ります」
「ああ、真奈美ちゃん、どうもありがとうね」
彼女は青年団の訪問に向けて台所のお手伝いに来ていたらしい。
そして爺ちゃんと2人きりになって12時が近づいた。
「爺ちゃん、トリツキを殺すことってできるの?」
爺ちゃんは僕の質問に首を振った。深い絶望的な溜息だった。
「悪霊のようなものだから、殺すことなんてできない。ミツル……取り憑かれて狂い死にする前に爺ちゃんと一緒に死のう」
爺ちゃんは悲しそうに僕を見つめた。僕は涙が出て来た。爺ちゃんは言った。
「お前は立派だったよ。青年団のみんなに閨の中のことを言わなかった。お前はお前のことを助けてくれた2人の名誉を守ったんだ。
それだけでない。お前は5人の候補を誰も名指ししなかった。お前の名指しを断って村の衆から非難されることからあの娘たちを守ってやったんだ。
だから、お前に無残な死に方をさせたくない。トリツキは村から出る者を追いかけないが、お前は別だ。どこに逃げても必ず追って、お前を取り殺すだろう。
だからトリツキから逃げる方法はただ1つ。自ら死を選ぶことしかないのだ。痛い思いはさせずに死ぬ方法を知っている。
一人であの世に行くのは淋しいだろう。わしも一緒に行く。お前に寂しい思いなんかさせない。
ミツル、お前はわしの大切な孫だ。そして男としても立派な、自慢の孫だ。わしはお前を誇りに思う。できればわしが代わりになってやりたいが、それができないなら、わしが道連れになる。
さあ、後2時間あれば必ず楽に死ねる。部屋を閉め切って睡眠薬を飲んで、炭を焚く」
「じ……爺ちゃん。わかった。痛くないし、苦しくないんだね」
「そうだ。眠るように静かに死ねる。爺ちゃんと一緒に天国に行こう」
僕は爺ちゃんと部屋に閉じこもると、コンロの炭を起こした。
そしてガムテープでドアの隙間を貼って、空気が漏れないようにした。
「後はこの睡眠薬を飲んで横になるだけだ」
爺ちゃんは薬を僕に手渡した。仕方がないんだ。あんな恐ろしい物の怪に取り憑かれて狂い死にするくらいなら、まともな人間のままで安らかに眠りたい……
 


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