第一章-1
ピロピロピロロ♪
「ん?メール?」
相手は、藍田 沙希。
『これから、うち来ない?今日、親が二人で出かけちゃって一人なんだよね。お願い!怖いから泊まってって!』
またか。このメールを受け取ったのは何度目だろう。
「本当に怖がりなんだなー沙希は。」
とかいいながらも、これが密かな楽しみだったりする。
親も、最初はいきなりで戸惑っていたが、何度かしてるうちに習慣的なものに変わっていった。
ピンポーン♪
「早かったねー!さすが、真央!!」
「へっへっへー!お邪魔しまーす!」
いつも、沙希の家に泊まるときは女子高校生らしく、恋バナや先生の愚痴とか言い合っている。沙希とは、高校一年の頃から同じクラスで二年になってからは席が隣になったりもした。
ご飯もコンビに弁当で済ませ、あとは寝るだけ。
もう少しで寝れそうなときに、沙希が話しかけてきた。
「ねぇねぇ。真央はさ、好きな人とかいないの?」
「この前も言ったし(笑)いないよー。沙希は?」
「私もこの前と一緒。やっぱいないんだー。」
沙希もいないんだ。
「なに?その落ち込んでる感じは。」
「いやぁ。つまんないな。って思って(笑)」
「君も一緒だからねー。わかってるー?」
「はーい。おやすみー。」
「おやすみ。」
私は好きな人がいない。これは嘘。
高校一年の秋頃気づいた。私は、沙希のことが好きだ。
何にも囚われずに、自由なところ。やさしいところ。少し、おっちょこちょいなところ。
すべてを愛おしく感じてしまっている。
そんな恋愛が通用するとは思わない。だから、この思いは胸のうちにしまっておこう。
そう決めたんだ。