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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第12話-5


「あっ、ひとみさん! こんにちは!!」
「あら。由梨ちゃん、桜子ちゃん、こんにちは」
「こんにちは、ひとみさん」
 妊婦となった由梨の付添いとして、定期受診のために、かかりつけである“ねむろ・マタニティ・クリニック”へやってきた桜子は、知り合いになって久しい女性の顔を待合室に見つけるや、すぐにその側へと歩み寄った。
「由梨ちゃんも、お腹が目立ってきたわね。もう、だいぶ、落ち着いたでしょ?」
「はい」
「お姉ちゃん、最近すごく食べるんです。お腹より、ほっぺたの方が、まんまるしてません?」
「も、もう、桜子ったら!」
「あらあら。でも、食欲がしっかりあるのは、いいことよ。食べすぎは良くないけれどね」
 そういって、お腹を抱える一美(ひとみ)もまた、由梨と同じ時期の妊婦であった。
 由梨に懐妊の兆候が出始め、何処の医院で診察を受けるべきか検討していた折、城南町にあるという、規模こそ小さいが細やかな心配りで、秘かに妊婦の間で評判を得ていたこの“ねむろ・マタニティ・クリニック”を選択した。
 その初受診の時、緊張が重なって、待合室で具合を悪くしてしまった由梨を、同じ妊婦でありながら、真っ先に近寄って介抱してくれたのが、この“安堂一美”という女性であった。
 以来、同じ時期の妊婦であり、既に双子の女の子を出産した経験もあるという一美に、由梨は色々な不安ごとを相談することが多く、また、それにしっかりと答えてくれる一美を、心強く頼りに思うことしきりであった。
『私も、久々のお産だから、ちょっと不安だったりするのよねぇ』
 確か、双子の女の子は、今は小学生だと言っていた。しきりに、““おとうとー、おとうとがほしーい!””と、ねだりにねだられて、夫の勇太郎も、もうひとり子供が欲しそうな様子を見せていたから、年齢的にもこれが最後のチャンスだと、一念発起して仕込んだという。
 自分の排卵日は、しっかりと計算している一美である。“超絶好機”だった夜に、夫の勇太郎をそれこそ根こそぎ搾る取るぐらいに、後ろから前から熱く淫らに交わって、何度もその精を身体の中に受け止め、見事ここにこうして、懐妊したのであった。
 直感的ではあるが、多分、今お腹の中にいるのは、男の子だと思う。双子の姉妹を身篭った時と、体調の変化が違っていたからだ。もちろん、女の子でも、一美にはとても嬉しい。
『新しい家族が出来るっていう、あの幸せな瞬間を、もう一度味わえると思うと、お産をするのがとても楽しみでもあるの』
 初めて出産をしたとき、これ以上の苦しみがあるものか、と、それを辛いと思うことも多かったそうだが、双子の女の子が、健康で無事に生まれてくれた瞬間の、暖かくも幸福に満ち溢れた感覚は、これまで経験したことのない、本当の本当に、至福のひと時だった。そう、一美は瞳を輝かせながら、由梨に語ってくれた。
 その会話が、初めての妊娠で不安に揺れる由梨の心を、とても軽くした。出産を経験した一美でも、不安に思うことがあり、また、出産を経験しているからこそ、かつて味わったその“幸せ”に、もう一度会える瞬間を待ち望めるのだという、その前向きな心が、由梨を明るく照らしてくれたのだ。
 以来、由梨は一美を慕い、連絡先を交換する仲にもなっている。受診の日が重なるのは、そこにも理由がある。
 母親を早くに亡くし、桜子の親代わりと言ってよかった由梨だから、頼りに出来る年上の女性の存在である一美は、初めて出来た“姉”のようだった。
「桜子ちゃんも偉いわね。いつも、お姉ちゃんの付き添いをしてるんだもの」
「えへへ。お姉ちゃんには、ずっと面倒かけてきたから…。だから、恩返しってわけじゃないけど、お姉ちゃんを助けてあげたいの」
 姉の由梨が、元気な赤ちゃんを産むまでは、軟式野球部のこと以外の自分のプライベートは、極力、姉のために割こうと考えている。
 実際、桜子は、ひとつの決断をしていた。


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