投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 780 『STRIKE!!』 782 『STRIKE!!』の最後へ

『SWING UP!!』第11話-70


 現在の“法泉まつり”は、豊穣と繁盛を祈願して、“泉水神社”と“法泉市商店連合”が合同して主催するようになったものだ。
 もともとは、境内の中で組まれたやぐらを中心に、大小二重の輪となっている盆踊りが中心のものだったが、それがいつしか、規模を大きくしていったらしい。
 商店街のそこかしこに、太鼓を設えた櫓があるのは、踊りの輪をどこでも作れるようにと考えたのだろう。
「昔は、一向宗の連帯も繋がって、“おどり祭り”って言われてたみたいだね」
 いつの間にか手にしていた“広報・ほうせん”に、大和は目を通していた。
 “泉水神社”は、法泉市の中にあって、最も規模の大きい名勝地である。鳥居をくぐり、本殿に向かうまでの長い参拝路を囲むようにして、夜店が立ち並び、行き交う人の密度は非常に高かった。
 桜子と大和が、目に付いた“縁の場所”を巡りながら、“泉水神社”にたどり着いたときは、陽は既に落ちており、宵闇を照らすようにして、提灯から毀れる朱色の灯りが神社のそこかしこを、明るく浮かび上がらせていた。
「本殿までは、結構あるな」
「そうだね」
「はぐれちゃ、いけないよ」
「うん」
 二人は、繋いでいる手に力を込めた。人の密度が高くなっているから、ちょっと離れてしまうだけでも、はぐれてしまいそうに感じた。
 そのまま、居並ぶ夜店の喧騒を愉しみつつ、歩みを続ける。そこかしこで“カラコロ”と鳴る下駄の音が、いかにも“お祭り”といった雰囲気を醸し出していた。
「なにか、欲しいものある?」
「天津甘栗」
 即答であった。“たこ焼き”“まんまる焼き”“綿あめ”“りんごあめ”“焼きもろこし”“ベビーカステラ”等々、定番のラインナップも立ち並ぶ中で、“天津甘栗”を選んでくるあたり、古風で雅な感じがして、いかにも桜子らしい。
「じゃあ、帰りに買っていこうか」
「うん!」
 子供のように、にこやかな桜子を見て、大和は頬の緩みを抑えられなかった。
 階段を昇った、小高い位置に本殿はある。一番大きな櫓の組まれた境内から、距離があることもあって、その近辺には独特の薄闇と静けさがあった。
「お参りの人、ぜんぜんいないね」
「今じゃ、街中が、お祭りの中心地になってるんだろうな」
 こうやって、暗がりの中にある静かな雰囲気の本殿に、御参りに来る方が、奇特なのかもしれない。
 賽銭箱に小銭を入れて、鈴を鳴らしてから、二人は手を打ち鳴らしてから、それを合わせた。
「………」
「………」
 しばしの沈黙があってから、二人は合掌を解く。何を祈願したかは、お互いに秘密ということにした。
「さて、と…」
 ひとまず、“縁の地”めぐりから始まって、“泉水神社”を詣でるという、目的は達成した。後は、遅くならないうちに、桜子が希望している“天津甘栗”を夜店で買い求めてから、“安広寺”に帰るだけだ。
 踊りの雰囲気も気にはなるが、それは遠目に眺めるだけで、留めておくことにした。


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 780 『STRIKE!!』 782 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前