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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-39

(にぃにぃ…)
 隼人が、いつもと違ってバットを短めに持っていたことを、響は見ていた。自分の打撃を押し殺してまで、出塁することに精神を砕いたその姿勢を、しっかりと自分の眼に焼き付けていた。
(ひびきも、頑張るから…)
 胸に手を当てて、もう一度、瞑目する。そして、そのつぶらな瞳を見開いたとき、響の顔には、勝負にかける思いを顕にした、いつにない厳しさが備わっていた。
 バットを構えたまま、大きく伸びをする。背中と肩の筋肉をほぐし、身体の捻りを強くするための、“儀式”とも言える準備運動の仕草だ。
 そうして右打席に入った響は、二度目の対決となる大和と、対峙した。
「ストライク!」
 初球は、アウトコースの低めに決められた。最初の打席は、小柄な自分のストライクゾーンを掴めず、戸惑った様子も見受けられたが、二打席目にして早くも、それにアジャストしてきたらしい。
(さすが)
 “最高の右腕”と呼ばれるのは、速い球を投げるだけではなく、フィールディングも含めた、対応力の良さにも所以があるのだ。投球モーションを含めて、投手としての完成度の高さは、“隼リーグ”でも抜きん出ている
「ファウル!」
 二球目は、インコース。思い描いていた球筋から、さらに伸びてきたそのストレートに、響のバットは擦るようなファウルチップを放っていた。
 追い込まれた形となった。だが、響には慌てた様子はない。球筋そのものは、十分に見えているから、それに負けないスイングを心がければ、自分の狭いストライクゾーンであれば、好球が来るまでファウルで粘る自信がある。
 三球目。アウトコースに、それは来た。
「!」
 しかし、途中でわずかにスライドするような軌跡を描いたそれは、途中で完全にブレーキがかかり、ホームベースのすぐ手前でワンバウンドして跳ねた。
「ボール!」
(時々、こんなボールがあるけど…)
 多分、変化球を投げようとしているのだろう。しかし、それが決まったことは一度もなく、響は怪訝に思うしかない。
(見せ球のつもり?)
 ストレートと全く変わらないモーションから投じられてくるので、見極めがつかない可能性がある。だが、ストライクゾーンにかからないのであれば、あまり意味のない球でもある。
(それよりも…)
 内角の高めに来る、“剛速球(スパイラル・ストライク)”に注意を払わなければならないと、響は考えていた。マウンドの大和が投じるストレートで、そのコースに来るものだけは、球威も伸びも、他のコースに投じられたそれとは圧倒的に違う。おそらく、投球モーションから、腕の振り、指先のリリースと、すべてが最も理想的な形で投じられるコースなのだろう。
 分かっていても、空振りをしてしまう、そんな“ウィニングショット”だ。
「………」
 最初の打席で、一球、その球を響は見た。そして、それが自分にとってはボールになることもわかっていた。安打を放った時のストレートは、ボール球になった“ウィニングショット”に比べれば、わずかに球威の下がるものだった。
(多分、私には、“不完全”になっている)
 通常の打者であれば、内角の真ん中に位置するボールだからだろう。そこに、響は勝機を見出していた。
「!」
 五球目に、それは来た。自分にとっての“内角高め”にあたる、ストレートだ。おそらくは相手バッテリーも、その“ウィニングショット”のつもりで投じてきたのだろう。
 だが、他のメンバーたちのように、脅威を感じる球威ではなかった。
「喝!」
 響は、“トルネード”と称されるほどに捻ったバックスイングから生じた、猛烈で強烈なベクトルをバットに載せて、それを一閃した。二打席目ということもあり、球筋はしっかりと見えている。

 キィン!!

 長尺バットが唸りをあげながら、内角のストレートを峻烈に叩いた。打球は三塁線に、低くとも速い弾道で襲い掛かる。
「……っ!」
 三塁手の吉川が、必死に飛びついていたがグラブに届かず、ラインの内側でバウンドをしてから、ファウルゾーンを転々としていった。
「フェア!」
 飛んだ方向が良く、長打コースとなった。響は一塁を目指して一気に馳せ、小柄ながらも弾丸を思わせるスピードで駆けていく。
「梧城寺、行け!」
 一塁コーチャーに促され、響は一塁ベースをけり、二塁に向かった。相手外野手の動きが目に入ったが、打球がフェンスに跳ねなかったのか、まだ捕球に至っていないらしい。
「!」
 三塁コーチャーが“ここまで来い!”とばかりに、腕を振り回していた。それを見た響は、迷いなく二塁ベースも蹴り、三塁を目指す。トップスピードに入っている彼女は、まさに“弾丸”そのものであった。
「セーフ!」
 送球が三塁まで届いたときには、既に響はヘッドスライディングでベースを両手で掴んでいた。タッチをされるまでもなかった。
(にぃにぃは?)
 ホームベースに視線を向ける。
 当然だが、一塁走者の隼人は、すでにホームへ帰還しており、スコアボードには“1”の得点が、早々と点灯されていた。


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