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ドミニク、それは……
【その他 官能小説】

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娘との確執-1


めっきり皺が多くなった妻が私に言う。
「今度S市に行くのなら沙耶加のところに寄ってやって。孫の顔も見たいでしょう?」
妻はもう3度ばかり泊り込みで娘のところに行っているが、私は一度も行ってない。
たまたま娘が冬に出産したということもあって、冬道の運転は長距離が不安だという理由が一応はあった。
さらに2人で何日も家を空けたなら、水道が凍結するし、その間の除雪の問題もあるという口実もあった。
だから妻がその都度長距離の都市間バスで行っていた。

今回は私が前から見たかった演劇がS市で公演されるので、そのついでに寄ることにした。
遅くならないうちに一度は孫の顔を見ておかないと里方の祖父として格好がつかないと妻に言われて寄ることにしたのだ。
私自身も常に行く積りではいたけれど、それだけの為に行くのは嫌だった。向こうに行っても間が持たないし、いかにも孫の顔を見に来た『爺馬鹿』みたいで自分が間抜けに思えるのが嫌なのだ。
その他にも理由があるかもしれない。いや本当はその他の理由の方が大きいのかもしれない。
沙耶加は小さいとき親に嘘をついたので厳しく叱ったことがある。そのときは1時間一杯いくら泣いても叱り続けた。
娘は大きくなってそのことを妻に言ったことがあるという。
「だから私が大人になって、パパが年寄りになっても絶対面倒をみてやらない」
沙耶加は学校を出ると都市のS市に出て行った。それも親の近くにいたくないという彼女の考えからだった。
さすがに大人になった今では表面は親を立てた物言いをするが、なにかの拍子に胸の奥に鋭く刺さる言い方をする。
それが娘と私の間の確執になっているようだ。それは妻にも言ってないし、当の沙耶加にも勿論言ってはいない。
本当は娘として父親に甘えてもらいたかったし、親孝行の真似事でもしてもらいたかったが、私も沙耶加もそのことは無意識に避けてきたように思える。
娘が、アルバイト暮らしの彼氏を紹介したときも、私は腹が立たなかったし反対もしなかった。
娘は正社員で働いていたし、2人で生活する分にはやっていけるだろうと思った。
それ以前に娘が選んだ相手を私がとやかく言うのは筋違いだと思ったのだ。失敗すればそれは本人達の責任だし、大人同士が十分考えて一緒になったのだろうからと気にならなかった。
そのことも私は自分の心が娘から離れているからかもしれないと感じた。何故なら私は娘に無関心だからだ。2人が結婚前に同棲していても、「がんばるんだよ」と相手の男にも笑顔で言ったくらいだ。 


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