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【純愛 恋愛小説】

花の最初へ 花 4 花 6 花の最後へ

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数十年後―――――――







「…お孫さん、あの方はもう永くありません」

「…孫じゃなくて、妻ですわ」

「ハハ、またご冗談を」

「…先生、夫を診てくださってありがとうござい ました」

花は、ずっと自分が花だったことを彼に秘密にし ました。

幸せなら、それでよかったのです。

花は、何故か歳をとりませんでした。

「ねぇ、貴方、今日は何の花を飾りましょう か?」

「……」

「ねぇ、貴方、今日は何が食べたい?」

「……」

彼の呼吸が、小さくなってきました。

「……もう、いってしまうの?」

また私を置いていくの?

「君…は」

話せないはずの彼が、小さな声で呟きました。

「…君…は、あの時の花…なんだろう?」

……!!

この人は気づいていた。

最初から気づいていたんだ。

花は、堪えていた涙を、流してしまいました。

「やっぱり…綺麗だね…」

けして美しくない人間の姿になった花に、彼はそ う言うと

まるで見えているかのように、光を失った目を開 け…

「じゃあ…またね…」

あの時と同じことを言い残し

静かに息を引き取りました。

神様、何故、私は歳をとらないのでしょうか。

私も、この人と一緒に逝きたいです。

愛する人を亡くしても、生き続けなくてはならな いのは

きっと神が与えたもう一つの代償なのだと、花は 思いました。

「待っててね、またすぐ会いに行くから」

花は愛する人のお墓の前で、笑顔でそう呟きまし た。

一輪の、丘の花を添えて。


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