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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・上編〜-4

『ふぁ……眠いわ……』
『夜更かしは良くないぞ〜 肌に悪いね。』
んん? と、聞き慣れない声を聴いて左を向いた。
『やぁ♪』
『………キシンさん、今日は朝から?』
自分の隣にキシンが座って、朝食を食べていた。
キシンは紅様の古い友人らしく、時々紅館にやってくるのだが、最近は毎日のようにやってくる。
時には火竜館の客室に泊まることもあるのだ、あの客室を利用するのはキシンが一番多い。
『今日は何の用ですか?』
朝食のフレンチトーストを頬張りながら、キシンに聞いてみると、変に真面目な表情をしながら。
『君に会いに来たんだよ……』
と言った。 が、すぐにいつものヘラヘラした笑いに戻った。
『別に用は無いね、それとも、用がなくちゃ来ちゃ駄目か?』
さぁ、と答えてさらにフレンチトーストを頬張る。
キシンは何を考えているかわからない…紅様もそうだけど。
『ねぇ…少し良いかしら?』
『は、はい。』
急にシャルナ様が声をかけてきたため、私は少し裏返った声で返事をしてしまった。
『フフ、そんなに慌てなくても良いのよ。
後で私の部屋に来て貰えないかしら? 勉強の邪魔にならないように、時間もあまりかけないから…大丈夫?』
『はい、勿論大丈夫です。 後で行きますね。』

話の内容はなんだろう、と考えながら食後の紅茶を飲んでいると、紅様が席を立った。
『これから…お出掛けになりますの?』
『あぁ、シャルナ。
王宮にね、今日は王子に授業をする日だから…』
紅様はシャルナ様に軽くキスをして食堂を出ていってしまった。
紅様のキスでシャルナ様の表情は幸せそのものになる。
紅様もシャルナ様とのキスで幸せになる。
『ウェザの奴、幸せだなぁ〜』
隣に座っているキシンが溜め息混じりに呟いた。
『そうですね…シャルナ様も幸せで…羨ましい…』
辛うじてキシンに聴こえる程度の小声で呟く。
ふと視線を感じ、キシンの方を見る。
『………』
『………何見てるんですか?』
キシンがじーっと私の顔を見つめている。 そして、唐突にこう言った。
『君、ウェザに惚れてる?』
なっ―――
『そう見えます? ………別に私はどうも思っていませんけど』
内心驚きながらも、口では冷静に返した。
まったく、急に何を言い出すのだろうか? この人は。
『………』
シャルナ様はチラリと私を見て、席を立った。
『………では、後でね。』
『はい…わかりました。』


よりによって、シャルナ様の前であんな質問しなくても良いと思う。
二人は幸せなんだから、私が入り込む余地なんて無い。 だから、触れないで欲しいことだった。
いや、入り込む余地が無いんじゃない。 入り込む勇気が無いのだ。
諦めるという、安易な道を選んだのは私だ。
『はぁ………』
廊下を歩きながら、溜め息をつく。
だが、目的地であるシャルナ様の部屋に着いた時にはいつもの表情に戻した。
『シャルナ様、私です。』
ドアを開けて中に入る。
『いらっしゃい…さぁ、ここにどうぞ。』
シャルナ様はベットに寝ていたが、私が来たので体を起こす。
ベットの側にある椅子に座り、シャルナ様を支える。
シャルナ様の体は、女の私からしても細いと思えるくらい痩せている。


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