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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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幻影-7




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 「君の話が本当なら、君のご主人様は相当な情緒不安定だね」

興味などおくびにも出さない様子で男はケタケタと笑っていた。

「ねぇ、話したんだからそろそろ帰ってくれない?」

「どうして?また怒られるから?そんなにご主人様が怖い?」

「・・・・そんなんじゃないけど」

むう、と頬を膨らませて両手に持ったカップの紅茶を覗き込む。

すると意に反して、カップの中に映る困ったような自分と対面するはめとなってしまい、シウはやり場のない視線を狼狽させた。

「内緒にすればいいよ。それなら怒られないで済むでしょ?」

それも、どうかと思う。

――そんなんじゃない。怒られるから、怖いから、確かにそれも一理ある。

だがシウの中で静かに渦巻くのは、また違う感情のようだった。

「よく分からないけど、アズールが嫌がることはしたくないんだ」

「アズールは何を嫌がってるの?」

「・・・・・分からない」

「はは、ペットの鏡だね。どうしたらこの短期間でそんな風に従順に仕込めるのかな」

「・・・・生意気だって言われるけど」

「へえ?でもさ、本当にそう思うよ。脳を支配するのは簡単だけど、自我を残したまま意思だけを虜にするなんて調教じゃ出来ないことだからね」

「・・・あたしにそんなこと分かるわけないでしょう」


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