投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ツンデレ。
【女性向け 官能小説】

ツンデレ。の最初へ ツンデレ。 6 ツンデレ。 8 ツンデレ。の最後へ

ツンデレ。-7

「――――…せんせー、とか呼ぶんじゃねえ」

唐突なアラタの言葉。
「え?」と息も切れ切れに問うアキ。
その視線を避けるようにアキの耳へ顔をうずめるアラタ。

「アラタって呼べよ」

そう言うと、アキの首裏の手にぎゅうっと力がこもった。
「あの…でも、先生の名前を呼」
「せんせーって呼ぶなっつったろ」
「いや、だからその、急に言われてもちょっと訳わか」
「あーもーうるせえな、いいから名前で呼べよ、あと空気読め」
「でっ!でも!!そんな急には言えないですって!」
「お前ほんとムードもへったくれもねえ女だな」
「は!?なにそれ!!大体いきなりこんな事しといて!先生だってあたしの名前呼ばないくせに!?」
そこまで言いきり、沈黙が流れる。

「…んじゃあ、言ってやるよ。よく聞けよ」

アラタは指を引き抜き、身体を起こすとアキを抱きかかえ膝に乗せた。
まるでお姫様抱っこのような状態。
「あ〜、お、重いですよね、すみませんほんと…」
意外な展開に慌てふためく他ない。
そんな言葉をスラリと受け流す淡々とした表情のアラタ。

なによ、何が起きるのよっ…

未だじんじんと疼く自分の奥に未練を残しつつ、アラタをちらっと見やる。
すると、アキの上半身をゆっくりと、力強く、抱きしめた。

また、この優しさ。ほんとずるい。

胸の奥がキュンと鳴る。
思わせぶりなことばかりされては参ってしまう。
「他の病院に行ってんじゃねえよ」
胸に顔をうずめたままのアラタが言う。
「あ…すみませ」と言いかけて言葉が塞がれる。

「俺以外にどこも触らせんな」

「主治医は俺だ」

ぽつり、ぽつりと、アラタの心の言葉が溢れ出した。

父親から受け継いだ病院、俗に言う「二世」。
心無い人から比較されるような言葉もあったことだろう。
そこらのタレントよか、とびっきりのルックスを持ち合わせたせいで、客寄せ的な評価をされたこともあったかも知れない。
―――自分の理想の診療と、現実。
誰かに「先生」以外での部分を見せられているんだろうか。
本当の自分を解放できる相手が、今までにいたのだろうか。

ああ、この人は。
あたしと似たもの同士なのかな。

うまく溶け込むことを諦め、無気力になることで逃げてきた今まで。
合わない、疲れる、そんな都合のいい理由をつけてはそっぽを向いてきた。
そんな自分とアラタに、なんとなく同じ匂いがする。
頑張りを認めてほしい、たまには褒めてもらいたい。
甘えてみたい、たまには駄々をこねたい。
理解者が欲しい――――愛が欲しい。

目の前のこの男に、徐々に人間的な部分が見える。
…ちょっと可愛いかも。
かなり一方的で困った狼だけど。


ツンデレ。の最初へ ツンデレ。 6 ツンデレ。 8 ツンデレ。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前