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ツンデレ。
【女性向け 官能小説】

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ツンデレ。-2

「次の方どーぞー」
最後の患者が入ってくると、診察室がむあっとキツイ香水に包まれる。
毎度のこと、アラタ狙いのOLである。
わざわざ会社を抜けて、着替えを持参しているのかいつも勝負服で挑んでくるこの女。
香水嫌いのアキにはまさに地獄だ。
「今日はどうしました?」
患者には喜怒哀楽表現のある言葉をかけられるアラタ。
アキは香水にむせながらも、心の中で二重人格…と皮肉っていた。
「あーらたせんせ♪いい加減お願いしますよぉ」
「今日はどうしました?」
「じゃなくて♪お食事会の件です♪」
「…あぁ、首の湿疹はもうよくなったんスか」
「も〜ツレないなー最後のお願いに来たんですよぉ」
アラタの顔が無表情になっていくのがわかった。
こうなるとアキの出番となる。
「ほんっとみんな待ってるんですってば。アラタ先生に来てほし」
「古宮」
OLの言葉を遮るように、ひどく冷たく呼ばれる。
嫌な役回りだ…と思いながらいつものように対処した。
「あ、先生がいつものお薬処方しますとのことです。お大事にどうぞー」
そしてもの凄い眼光を浴びながら退室させることとなる。

はぁ…ここの看護師さんっていろんな意味で心労が多いわ…

毎日痛感するアキだった。



「ん…あー…終わっ…たーーー」
背伸びして大あくびを一つすると、ふいにアラタが言った。
「おい、お前今日残れ」
帰る気満々のアキは泣きすがるように言った。
「え!何でですか〜!この前待合室の模様替えしましたよ!?」
「そうじゃねえ」
「子ども向けのポスターは明日アンパンマンに変えますよ!?」
「ちげーよ」
「あ!わかった!トイレの電球取り替えなきゃいけなかったんですね!?」
「…たいがいうるせーなお前も」
「じゃ何なんですか〜!あたし今日産婦人科に行かなくちゃいけな…」
と、そこまで言ってアキははっと口を押さえた。
二人の間に沈黙が流れる。
バツの悪そうな表情を浮かべるアキの様子をしばらく見ていたアラタが言った。
「婦人科通ってんのか…どうりで、だ」
一番突っ込まれたくないことを言われてしまった。
「婦人科でピルの処方かよ」
そう―――アキは近頃、アラタの診察を拒んでいた。
勤める以前はアラタをかかりつけ医としていたアキだが、最近は全く気配すらない。
以前処方された薬など、とうに切れている筈だった。
「中用量ピル…で、副作用。最悪だな。ドンマイ」
冷たく言い放ち、手をひらひらと振られた。
慌てて説明しようとするアキ。
「でも!別に先生の薬が嫌だとかではなくて…」
「全然合ってねーんだよお前の体に!わかってんだろ!」
強い口調、鋭い目。
返す言葉が見当たらない。
・・・確かに、婦人科で処方された薬は中用量ピルというものだった。
飲み続けることで皮膚も改善される、と言われたが一向に良くならなかった。
むしろアラタの処方により出されていた薬のほうが効いていた。
それでも…アラタの処方を拒む理由―――――
アキはアラタに診察されるという事が恥ずかしくなってしまっていた。
日常的に近くにいるうち、診察の時だけアラタの患者になるという特殊なことに対応できなくなっていたのだ。
そこでホルモンバランスを整えようと婦人科に通ってみたのだが、どうもうまくいかない…それをアラタに見透かされていた。


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