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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館番外編〜大公爵結婚騒動〜-2

『………ニャフン。』
自分の部屋に戻ると、力が抜け、椅子に座り込んでしまった。
『王様も随分と熱心でしたね…』
アルネが紅茶を煎れてきてくれた。
『あぁ、実は歴代の王様達も私を一族に迎えたい思っていたらしくてね…
でも、姫がいなくて断念したらしいんだ。 で、今の王様に姫が生まれたから念願の、ということらしいんだ。』
『確かに、紅様なら良い統治をなさるでしょうし、寿命というものが無いのですからずっと王でいられますものね。
王様が次期国王としたいのもわかります。』


しかし、それは望まない。
不老の王など居ない方が良いのだ。
『なにより、私にはシャナがいるからね。』
アルネが頷く。
『ええ、シャナさんはまだこのことを知らないようです。 まぁ、話していないので、知っているはずがないのですけど。』
そう、バレないうちに断わるのが一番だ。 シャナのことだから、知ってしまうといろいろと心配をかけてしまいそうだ。
だが。
『ニシシシ♪』
突然、何処からか笑い声が聴こえてきた…
『誰!?』
アルネが驚いて立ち上がる。
『あ! ゼロね!』
そう、この声はゼロだ。
アルネが部屋の外を見るが、誰も居ない。
クローゼットや隣の寝室も見たが、居ない。
『…もぅ! 隠れるのが上手いんだから!』
考え付く場所を探し尽したアルネは、降参して椅子に座り込んだ。
『ゼロ、出て来なさい。』
私が溜め息まじりの声で言うと、ゼロが天井裏から顔を出した。
『は〜い、ご主人たま♪』(忍者かい…)
ゼロは笑顔で降りてきたが、アルネにガッシリと捕獲された。
『分かっていると思うけど…今のこと、言っちゃ駄目よ?』
アルネは椅子に座り、ゼロを膝に乗せている。
『…言ったら、おしおきだぞ…』
私も一応言っておく。
『やだなぁ、ゼロゼロがこんなおもし…こんな大変なこと言うわけないじゃん♪ 特にシャナちゃんには♪』
ニコニコと私やアルネに笑いかけるゼロ。
私とアルネは同時に溜め息をついた。

夕食の時間になって、どうも皆の様子が違うような気がしてきた。
なんだか、皆が私を見ているのだ。
しかも、その視線が何だか…痛い。
まさか、ゼロが喋ったのだろうか…?
しかし、ゼロは約束を守る子なのだが…
『紅様…お早いお帰りですね。』
私の右隣にはシャナが座っている。 そういえば、帰ってきたと伝えるのを忘れていた…
『あぁ、話が早く済んだからね…』
周りの雰囲気のせいだろうか? シャナもいつもとは違うように思えてしまう。
結局そのままの雰囲気で大した会話も無く夕食は終わってしまった。
なんとかこの気まずい雰囲気を明るく出来ないだろうか…
夜もふけ、寝る時間となった。 寝室ではすでにシャナがベットで寝ていたが私に気付いて体を起こした。
『お休みになられますか…?』
『うん、寝よう…』
シャナが寝ている側とは反対から体をベットに潜り込ませる。
そして、いつものように両手をそっとシャナの背中に回して抱き寄せる。
しかし…
『シャ、シャナ?』
シャナが私の抱擁を拒んだのだ。
手で私の胸を押し、距離を取った。
『ごめんなさい…私、具合が悪いので…』
気まずい雰囲気が、さらに気まずくなった。
初めて抱擁を拒否され、動揺を隠せない私に背を向けて寝ているシャナが言った一言が、決定打となった。
『紅様…エレン姫様は…良いお方ですか?』


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