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THANK YOU!! ver St.Valentine's Day
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-3



思ってもみなかった言葉に思わず驚いた拓斗に、エンディとの会話を説明する。
なるほど。と納得した拓斗にもう一度同じセリフを聞いた。
すると、拓斗はエンディに聞かれた瑞稀と同じように「うーん」と悩み始めた。
もしかして、聞かない方がよかったかなと考えていると、拓斗は一言。
「気になる奴・・だったかな」と答えた。

「・・・何で?」
「いや・・だってさ・・」

そう言う拓斗は手繰り寄せた記憶を瑞稀に話す。
今考えてみれば、とても淡く、優しい記憶を・・。





*****


5年生に上がった拓斗は、近くに住む愁と一緒に登校した。
校門でクラス替えの紙を受け取り、自分の名前を探すと丁度真ん中にあった。
とすると、自分は2組だということが分かる。
愁の様子を伺うと、それを待っていた彼は紙を折りながら「俺も2組だよ」と答えた。

「(・・つまり、コイツと6年間一緒なのか)」

自分を理解してくれる一番の親友だが、マイペースすぎていつも振り回されている拓斗からすると、クラスぐらいは別にして欲しかったというのが本音。
今でもクラス替えの紙を折り、紙飛行機にしてしまっている。それが完成したら、飛ばすことが目に見えている。それを拾いに行かされる自分も。
もうちょっと周りのことも考えろと溜息をついて、手にある紙に視線を落とす。
男子はお祭り騒ぎが大好きな奴らが集まっている。女子もノリが良い奴が多い。
何かと行事の時は大変になりそうだな・・と考えていると、ふと隣の気配が無くなっているのに気づき、横を見る。

すると、先程まで居た愁の姿が見えなかった。慌てて周りを見回すが、どこにも居ない。
紙飛行機だけがポツンと落ちていただけ。

「・・ったく・・アイツは・・」

また勝手にどっか行ったな・・と呆れながらも、紙飛行機を拾った。
それを折り畳んで、昇降口に向かおうと歩きだしたその目の前にある少女が居た。
平均並みの身長に赤いランドセルを背負って、肩くらいの黒い髪を風になびかせて一生懸命クラス替えの紙を見て歩くその少女に拓斗は見覚えがあった。

「(・・アイツ・・。八神、瑞稀・・)」

去年の算数、少人数クラスで一年間下のクラスだった拓斗の斜め前に座っていた少女だった。勿論何もなければ他人を覚えていない。
この少女はとにかく不思議だった。
下のクラスは基礎を固めるのが目的なクラス。頭が良い人は応用を勉強する上のクラスに行くハズなのだ。拓斗は、特に勉強が出来ないわけでは無かったが、不安要素があった為に一年間下のクラスに居続けた。が、この少女は勉強が出来ないどころか得意とまでしていた。もしかしたら得意じゃないのかもしれないがいつも先生からの無茶な設問を難なく解いていく様子から、明らかに上のクラスに行ける程だ。
なのにも関わらず、ずっと下のクラスに居続けた。
しかも内職をするわけでもなく、ボーッとしているだけ。一応ノートは取っているようだったが。
そんなわけで、少女の存在が4年生の後半から気になりだし、とうとう名前まで覚えてしまった。
そういえば、あの少女はどこのクラスだろうと考えて紙を見ようとした時に彼女の友達が彼女に話しかけた。
その友達は、拓斗の視線に気付くと嫌そうな顔をした。
恐らく、ずっと見ていたことを知っているんだろう。だから瑞稀に声をかけたんだろう。と安易に予想がついた。
慌てて視線を逸らすと二人はそのまま昇降口に入っていった。

「(・・何やってんだ・・俺)」

女々しくなってしまった自分に呆れて、溜息をついた。
すると居なくなっていた愁が戻ってきた。悪態をついて、自分も愁を連れて遅れて昇降口に入った。


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