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THANK YOU!! ver St.Valentine's Day
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-2



「瑞稀。何作ってんだ?」

そうキッチンで何やらやっている瑞稀に聞いたのは、一緒に住む彼氏である鈴乃拓斗。
彼とは、色々辛いこともあったが再び一緒にいられるようになって三年が経つ。
ついこの間約束した、「永久に一緒に居る」という約束もすぐでは無いが交わされることになった。
その証が、瑞稀の左手薬指で細く銀色に輝いている。
それからは、拓斗も広すぎるマンションの一室に住む瑞稀の部屋に住むことになった。
拓斗自身も剣道の世界大会に出場する機会が増えたので一石二鳥。
何よりお互いがお互いを必要としていて、長く一緒に居たいと願っているのだ。
同棲なんて、通過点に過ぎない。

と、言ってもお互い世界に名が広まっている者同士。
瑞稀は練習に公演が毎日のように追われている。その上、子供たちにトランペットを教えるというバイトまでも請け負っているので、どちらかと拓斗よりも忙しい。
だから料理は基本的に、拓斗が作っている。その代わり、片付けと食器洗いは瑞稀が担当している。
今日も、何ら変わらない。
拓斗の作った美味しい夕御飯を食べて、瑞稀が食器荒いをする。
そのあいだにシャワーを済ませてリビングに戻ってくる拓斗に、麦茶を渡して少し二人の時間を過ごす・・。これが、日常。

しかし、今日は違った。
シャワーを済ませた拓斗がリビングに戻ってくると、瑞稀はまだキッチンに居るのだ。
二人分の食器だから特に時間はかからない筈だし、元より瑞稀は洗い物が好きだから面倒くさがる訳がない。なので、拓斗は不信感を覚え、キッチンに顔を出した。
すると、甘い匂いが香ってきた。その発生源に居るのが、瑞稀。

一応聞いたのだが聞こえていないようなので、拓斗は寂しく思いながらも瑞稀に近づいた。
柔らかい、でも細い腰に腕を回して一回り小さい身体を自分の腕の中に閉じ込め、瑞稀の肩に頭を乗せると、瑞稀もさすがに気付いたようで顔を真っ赤にして拓斗を見た。
瑞稀にしてみれば、慣れるに慣れない体制なのだ。シャワーを浴びたばかりで熱を持ってる全身の体温をリアルに感じるし、首筋にかかる拓斗の髪も乾いていない。さらには自分も使っているシャンプーの匂いもして妙に恥ずかしい。

「た、拓斗・・!いきなり、抱きつかないでって・・っ!!」
「声かけても気付かなかったからだろ?」
「え、そうなの!?ゴメン!」

慌てて謝る瑞稀に、拓斗は「大丈夫」と言って安心させる。
それよりも今の拓斗は自分を無視したことよりも気になっているものがあった。
視線を、瑞稀からずらして下に向ける。そこは、瑞稀の手元でキッチンの上に乗っている・・。

「あ、チョコ、作ってたんだ。トリュフ」
「え?」
「今日、バレンタインデーだから」
「・・お前、覚えてたのか?」

拓斗は思わず、あんぐりとした。まさか毎年忘れている奴が今年は覚えている。
そんな奇跡があるのかと、ただ驚いていると、ふくれっ面になった瑞稀が小さい声で、「・・まぁ、いつも忘れてるし練習行くまで忘れてたけど・・」と言った。
その言葉で、オーケストラの仲間から教えてもらったんだろうと予測がついて、笑った。


「・・それ、俺に?」
「・・・・他の人にあげよっかな」
「・・笑って悪かったって!」
「・・拓斗以外に・・居ないよ」

膨れているかと思ったら、次は顔を赤くさせて嬉しくなるような言葉を告げる恋人に拓斗は嬉しくなって、無意識に抱きしめる腕を強くさせる。

「ちょ、拓斗、動けないよ・・!」
「いーじゃん・・。ていうか、嬉しくなること言う瑞稀が悪い」
「・・・トリュフ。溶けるよ」
「・・・・このまま移動して」
「・・・それ、無茶言ってるって分かってるよね」

そうぶっきらぼうに言うが、瑞稀はこの温もりを嫌がる訳もなく、顔を真っ赤にさせながらも抵抗を一切しないで拓斗の言った通りにトリュフを乗せたトレーを持って体重をかけて冷蔵庫まで移動して無事に中に入れる。
待っているあいだにシャワーでも浴びようかなと考えたが、拓斗の腕が離れる気配が見られないので、仕方なくまたも体重をかけてリビングにあるソファーへ移動する。
そして、ソファーを背もたれに拓斗が座り、その前に抱きしめられた瑞稀が座るという奇妙な光景が出来上がった。

どうしようかなと思っていると、ふと練習中に出たエンディの言葉を思い出した。
どうせなら、今聞いても悪くないか。と考えた瑞稀は拓斗に声をかけた。
もしかしたら、くだらないとか思われるかなと思ったが「どうした?」と優しい、甘い声で答えられてしまっては、言葉を続ける他ない。

「あのさ、私の第一印象・・どうだった?」
「・・・は?」



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