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THANK YOU!! ver St.Valentine's Day
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-1



(『』は全て英語)

『ミズキ、今日はバレンタインデーね!!』
「・・・・は?」

突然の話題に瑞稀は思わず、楽譜をめくっていた手を止めた。




ここはアメリカ。世界に名を響かせる音楽家やスポーツ選手、芸術家が溢れる活気ある大国の一つ。
その国のとある街。そこを拠点にして世界的に活動をしているオーケストラ楽団が瑞稀の居る場所。
何年も前にスカウトされてから、いくつもの公演に名前を残してきた。
どれだけ辛いことがあっても全て乗り越えてきた。
そんな瑞稀を、仲間たちはすぐに受け入れ認めてくれた。成人をした今でも妹のように可愛がってくれている。
その中でも一番瑞稀に構ってくれる、金管担当のエンディ。10歳程年上で、とても頼りになるお姉さんだ。
そのお姉さんが次の公演で演奏する曲に使う楽譜を真剣に見ていた瑞稀に浮かれたような声をかけた。
話題についていけない瑞稀は思わず日本語で首を傾げた。

『だから、今日はバレンタイン!』
「・・・・え・・」
『彼氏から何を貰えるのかしらねー?』

楽しそうに話すエンディはからかうような視線を向けている。だが、


『・・・・今日、って、バレンタインなの!?』

我が主人公・瑞稀はその冷やかしにも動じず、また信じられないという声を上げた。
勿論、それに拍子抜けするのはエンディ。
まさか恋人の為にあるようなイベントを、まさか忘れている人がいるとは思わなかったのだろう。仮にも、彼氏が居るんだから。
だが、さすがに9年も一緒にいるとそういう性格を理解してしまうのか、エンディは深い溜息をついて、『ヤバイ、今日材料買って帰らなきゃ・・』と呟いている瑞稀に向き直った。

『・・ミズキ。あのね・・』
『ありがとー、エンディ。教えてくれて。また忘れて拓斗にお返し要求されるところだったよ』
『・・・“また”・・?』

その言葉に、エンディは嫌な・・とまではいかないが何かが過ぎる予感がした。
不安げな表情をしたエンディに構わず、瑞稀は照れたように頬を掻きながら、

『うん。毎年バレンタイン忘れて、拓斗にホワイトデーのお返しねだられるんだ』

と恥ずかしそうに言った。
エンディは感じた予感通りだったと頭を抱えた。『(そこは照れるところじゃないのよ・・ミズキ・・)』と。

オーケストラ、トランペットのエースを担うこの子はトランペットになると物凄い能力や記憶力を要するのに、こう恋愛事には逆に疎すぎる。
もしかしたら、トランペットの才能と引き換えに恋愛事に疎くなっているんじゃないかと嫌が応でも考えざるを得ない。

『・・本当に、聞きたいわ』
『・・・・?何を?』
『彼氏くんに、アンタの第一印象を。』

ずっと彼女を愛し続けている彼氏から見た、瑞稀の最初の印象。
どう考えて、どう接していって、恋人になったのだろう。本当に気になってしまう。
が、瑞稀は「うーん」と少し悩んだだけで、特に興味も沸かなかった。
エンディはそんな様子を見て、再び溜息をつくと自分の楽器が置いてある席に戻った。

一人になった瑞稀は再び楽譜に目を通し始めた。
が、すぐに別の思考にとらわれる。

「(・・第一、印象・・か・・)」

考えたこともなかったな。とポツリこぼす。
最初に声をかけてきたのは拓斗の方だったし、気がついたら自然と仲良くなっていた。
瑞稀から見た拓斗の第一印象は・・ゲームの話が出来る人。だったような気がする。

悶々と考えていると、席を外していたt指揮者が戻ってきた。
瑞稀は慌てて手に持っていた楽譜を譜面台に置いて綺麗な刺繍がされたファイルから先程まで演奏していた楽譜を取り出し、楽器を持った。
帰りに、スーパーに寄って帰らなきゃな・・と片隅で考えながら。



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