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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第10話-18


  【双葉大】|1  |   |   |1|
  【城二大】|   |   |   |0|


「おいおい、いきなりやってくれるじゃねえか」
「いや、まさか入るとは思わなかったんだが…」
 初球先頭打者本塁打という、球場全体の度肝を抜く離れ業をやってのけた岡崎が、ベースを一周して、ウェイティング・サークルに立つ雄太のハイタッチを受けていた。
「ど真ん中に直球が来たんで、思わず振り抜いたらこうなった」
 本当なら、チームにとって1部リーグ初参戦の第1試合の第1打席だから、最初は球数をたくさん放らせて、皆が試合に落ち着く時間を稼ぐつもりでいたのだ。
 その役目は、2番打者の栄村に任せることになった。
「フォア・ボール!」
 初球先頭打者本塁打に動揺を隠せない相手投手・志村は、ワンスリーのカウントから、ストライクを取りにいったであろうカーブを投じたものの、それが外れて、栄村を歩かせていた。
 栄村は、岡崎が期待するところの“よく見る”打席を実践したと言える。選球眼のいい選手は、地味な存在だが、チームにとっては非常にありがたい。
「よっしゃ、いくか!」
 待ち望んでいた、1部リーグでの試合である。雄太は武者震いをする自らを落ち着かせるように、バットを二度ほど振って、勇躍しながら打席の中に入った。
 大和にエースの座を譲ってから、雄太は、練習のウェイトをバッティングに置くようにしていた。もちろん、有事の際にはマウンドにたつ“控え”でもあるので、投球練習も続けてはいるが、掌のマメが改めてつぶれるほどに、素振りやトス・スイングの数を増やしていた。

 キィン!

「おおっ!」
 それが鋭いスイングを生み出し、また、生来の柔らかいリストがヘッドの走りをさらに強くする。そうして放たれた打球は、俊足の中堅手・速水が追いつけないほどの球足で、深々と右中間を破り、走者の栄村は悠々とホームに還ってきた。
 雄太の1部リーグ初打席は、適時二塁打であった。
「雄太、ナイスバッティング!」
 三塁・コーチボックスに立つ品子が、二塁上の婚約者に声をかける。試合中は、当然ながら、雄太に贈られたドルフィンリングを外しているが、投げかける視線は熱く、また、強い絆を感じさせるものがあった。
「あたしも、つなぐよ!」
 4番打者として、打席に入る桜子。大柄な選手であるが、女性と言うこともあり、にわかに球場内が“興味津々”と言う雰囲気に包まれた。その中には、彼女が元・バレーボールの日本代表だったと知っているも者も多くいる。『“隼リーグ”特集号』にも、しっかりと掲載されている情報だったことも大きい、
 だが、桜子にはそれは本当に瑣末なことだった。4番として、捕手として、チームを勝利に導くために成すべきことを、彼女はとにかく考えている。それが、野球を愉しむことの醍醐味だと、2部リーグの戦いを通じて感じ取り、学んだことでもあった。

 ドガキン!

「うおっ!?」
 桜子特有の打撃音を残し、打球は一・二塁間を強烈に抜けていった。二塁に雄太がいるいま、彼が進塁しやすい場所へ打球を飛ばした桜子は、怪力に任せてスイングをしていたこれまでとは違い、チーム・バッティングに徹している。
「雄太、ストップ!」
 ただ、打球が早すぎたため、品子は雄太を三塁にとどめた。無死である今、次打者のことを考えれば、当然の判断である。
「やっぱ、三塁コーチボックスに人がいるってのは、いいな」
 昨年のこれまでと違い、自分で打球を見ながら判断する必要がない、というのは、非常にありがたいことだった。
「それが品子とくれば、俺はもう何も言うことないね」
「バカッ、試合中よ!」
 そういう品子も、照れた様子を見せながら、軽く雄太を小突いていた。…試合中だぞ、君たち。


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