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ゆえとナオさん
【同性愛♀ 官能小説】

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第8話-1

「さて、本題ね。ナオ、あなたもうすぐ成人するから、
私の築いたものを受け継いでほしいの。
これは遺伝子結合技術の研究過程で得た、パテントの利益が中心のもの。
技術そのものはまだ公表していないけれど、得られる利益はあなたの名義にしてある。
公表したら莫大な利益を生むものよ。同性間で子供ができるなんて、
世界の価値観が変わるでしょう。

私と恭子の娘である、あなたに受け取って欲しいの。
つらい思いをさせてしまった償いよ。
それと、ゆえちゃんとの子供が欲しくなったら、私のエージェンシーに連絡をして。
恩を売ってあるラボがあるから、そこで処置が受けられる」
「なんで、そんな急に…」

「ナオ、あなた身体の調子いいでしょ」
「いいよ?」
「病気しないし、お腹も壊さない、体臭もほとんど無い」
「それがなに?」
「私も不思議に思ってたんです。ナオさんてどうして悪いにおいがしないんだろうって。
えーと、ホントにお腹壊さないし…」
「シッ!」
「私がそうしたの。できるだけのことはした。外見の形質は恭子から。
でも、間違いなく私と恭子の娘だわ…」

「ずいぶん無茶もした。特に妹さんの朋子さんには心身共に大きな負担をかけた。
早くに亡くなった姉に対する、思慕の情を私が利用したの。
……胎児がある程度大きくならないと判断がつかないから、
朋子さんには何度もつらい思いをさせたわ。」
「それって…まさか…」
「?」
「不完全な恭子を作るわけにはいかないもの。失敗作は処分したわ。
私は恭子への思いのためなら何でもする女よ!」
「…このっ!命をなんだと思ってんだ!自分の子供だろっ!」
(はっ!)

私は弾かれたように、両手を広げて立ち上がります。
私の左手のひらに、ナオさんの釘のようなナイフが突き立って、
手の甲から刃が出ています。
左腕が後ろに跳ね飛ばされて、痛みはしばらくしてからきました。

「い、痛い」
「うわっ!!なんで!ゆえ、大丈夫!」
ナオさんは、うずくまる私に駆け寄ります。
「ちょっと!!ゆえちゃん!大丈夫なの!」
「殺す!!それ以上、ゆえに近づいたら殺す!」

ナオさんはいつの間にか二本目のナイフを握っています。
ナイフを握り締めた指は、力が入って白くなっています。
今にもナイフが飛び出しそうです。
ナオさんは目が血走っています。

「マリーさん逃げて!ナオさん本気です!」
この距離でなら、ナオさんのナイフは、血管一本外さないでしょう。
後ろでマリーさんが、ジリ、とさがる音が聞こえます。
「わかった…帰るわ。ゆえちゃん、ナオをよろしくね」

私は唇を噛んで、左手首を押さえます。左手のひらは白くなって、
赤い血がポタポタ垂れます。
「ナオさん、これ抜いてください。ナオさんが捕まっちゃう」
「う、うん」
「それと、お母さんに刃向かうなんて、絶対ダメです。約束してください」
「わかった、わかったよ、ゆえ。顔が真っ青だよ。病院に行こうよ。うわーん」

お母さんは仕事中に連絡を受けて、病院へ駆けつけました。
「割れたグラスに、ゆえが手を着いたのね?」
「そう、私の不注意。ナオさんは責任を感じているだけ」
「ふうん…」
私はお母さんを、怒ったような顔で見つめます。ナオさんはしょんぼりです。
「わかった。怪我は縫っただけで、骨や神経、腱は大丈夫みたいだしね。
でも、動かすのは絶対にダメよ。指先に麻痺が残るからね。
私は仕事に戻るから。ナオさん、このとおりだからゆえのサポートお願いね」
「はい…」
お母さんは看護婦です。

マンションに帰りました。明日は二人とも学校をお休みします。
「ゆえ、今日はほんとうにごめんね。でも、どうしてあんなに速く動けたの?
クイックドローは祖父にも負けなかったのに…」
「ナオさんのにおいが急に変わったんです。何ていうか…
金属みたいな、静電気みたいな。
ナオさんのナイフは正確だから、どこに飛んでいくかは分かりました」
「それで…ゆえにはかなわない。
私、自分が怖いよ。カッとなって、考えずに身体が動いたよ」
「しかたないと思います。おじいさんとの訓練と、マリーさんの技術のせいだと思います。
今度、危なくなったら、目を閉じて、耳をふさいでください。
人を傷つけるよりずっといいです」
「うん、そうするよ。これからどうなるんだろう?何かが変わっていく感じがするよ」

私たちは疲れきっていたので、すぐにベッドに入りました。
(でも、どうしてマリーさんは、ナオさんを怒らせるようなことを言ったんだろう?)


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