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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第9話-27


「さあて、新しい双葉大の力を、見せてやろうぜ」
 マウンドに立つ大和を中心に、雄太、結花、岡崎、吉川、そして、桜子の内野陣が円陣を組む。その中で、結花の顔が少し固いのは、無理からぬところであろう。
「基本的には、打たせていきます」
「おお、そうしてくれ。特に、二塁と三塁にはバンバン飛ぶようにな」
 吉川も、三塁守備に移ってから初めての試合なので、見た目には飄然としている風ではあるが、口数がいつにも増して少ないので、その緊張の度合いがよくわかった。
「サードはとにかく強い当たりがくる。吉川、頼んだぞ」
「は、はい!」
 師弟関係とも言える、岡崎と吉川の二人だ。場慣れをすればおそらく、この三遊間は昨年と同じ“鉄壁”と称されるようになるだろう。
 様々な課題をそれぞれが抱きつつ、新年度における双葉大学の第一戦が、幕を開けた。
(ドリーマーズとは、一回お手合わせしてるけど…)
 二年前に、桜子が大和を強引に誘って参加した草野球大会のことだ。結果としては、大和の逆転サヨナラスリーランで勝利を収めている。
 もっとも、その時の桜子は、自分のプレーにとにかく集中していたから、相手の顔ぶれについて、記憶が曖昧なところがほとんどだった。
(突出した人はいないけど、総合力の高いチームだった)
 全体での印象とすれば、このようになる。
 マスクを被った桜子は、マウンドに立つ大和に初球のサインを出した。それは、内角高めを貫くあの球…“スパイラル・ストライク”だった。
「ストライク!」
 主審を務めているのは、やはり栄輔である。大和のストレートが、昨年のそれとは全く違うものになっていることを知っている彼は、初回から油断なくその球筋を追いかけるよう心構えをしていた。
「凄い球だなぁ」
 ドリーマーズの1番打者は、内角高目を貫いてきた“スパイラル・ストライク”に瞠目している。自身、捕手も務めているので、その球筋をしっかりと焼き付けようと、バットは全く振る素振りも見せていなかった。
「………」
 桜子は、内角低めを要求した。1番打者は、それも見逃して、形の上では追い込んだものになる。
「くるかな? 来たら、多分、打てないなぁ」
 1番打者の呟きである。おそらく、初球に投げ込まれたあの球を待っているのだろう。挑発とも言っていいかもしれない。
 桜子が大和に出したサイン。それは、外角低めのストレートだった。挑発には乗らなかったのだ。そもそも、“スパイラル・ストライク”は初球だけとはじめから決めていた。

 キンッ…

 1番打者がそれを強く叩いた。おそらく、挑発をした時点で、それに乗らないで外角に来ることを頭に入れていたのだろう。挑発そのものが、フェイクだった可能性もある。
 思い切り踏み込んだスイングは、鋭い当たりをバットから生み出して、一・二塁間を跳ねていく。
「!」
 既に打球の先には、結花が回りこんでいた。外角のボールに踏み込みを見せた打者の動きから、打球の行方をある程度計算して、守備の位置取りをしていたのだ。
「アウト!」
 それ故に、余裕をもってその打球を処理することが出来た。
「ナイスフィールディングだ、片瀬」
「いやあ、ドキドキでしたよ」
 久方ぶりの、試合での打球処理だったので、こちらに飛んできたときはさすがに緊張して、ない胸が震えた。だが、身体が動きを覚えていて、処理は思った以上にスムーズにこなすことが出来た。
(ひとこと、余計なんだけど)
 …ないものはない! まてまてっ、石は投げるな!
 さ、さて、である。
 続く2番打者も、初球に“スパイラル・ストライク”を投じた後は、内外を交互に責めて、当たりそこないの一塁ファールフライに打ち取った。
 順調に2死をとり、界隈最強チームの3番打者を打席に迎えることになった。
「「あ…」」
 桜子も大和の、その打者に見覚えがあった。やはり、二人が初めて参加した例の草野球大会で、見かけた顔だったからだ。


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