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狐もふもふ
【ラブコメ 官能小説】

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出会い〜そして〜-3

「――ぶっ!? な、なな、何を言っているんですか!?」
 その言い方はなんだか卑猥な感じがしますよ!
「くふふ、照れておる。照れておるな」
 真っ赤に染まった僕の顔を見て、ケラケラと笑う彼女。僕の世話をするとか言っておき
ながら僕をからかうのはどうなのだろうか。
 ここは一つ、ガツンと文句を言っておいた方がいいのかもしれない。
「あ、あの――っ!」
「お、ようやく私の名前が決まったのかの? して、私の名前はなんじゃ?」
「――えぅ!? そ、それは……」
 なんということだろうか。まさかこんな返しをされるとは思わなかった。
「ほれ、早く名前を言わんか」
 な、名前……どんな名前にしようか。早く、早く言わないと。
「え、えっとですね……」
 頭をフル回転させろ。僕の全神経を名前を考えることに集中させるんだ!
「こ、コンです!」
 うわーっ! ぼ、僕はなんてベタな名前にしているんだよ! パニックのあまり『コン』
だなんてベタベタな名前にしてしまった。と、いうかついその言葉が口から出てしまったのだ。
「ふむ。コン……か。随分ベタな名前をつけたの」
「うぅ……」
 やはり彼女もその名前はベタだと思ったか。でも、一度口に出してしまった以上言葉を
取り戻すことは出来ない。
「じゃが、お前さんがつけてくれた名前じゃ。その名前、しかと私の心に刻もう」
 つい口から出たベタな名前なのに、彼女は――コンさんはとても大事な物を仕舞うよう
に僕のつけた名前を心に刻んでいた。
 本当に大切に大事な物を扱うように……そんな姿を見ていると、何だか適当に口をつい
て出た名前というのが情けなく感じてしまう。
「あ、あの……本当にそんな名前でいいんですか?」
 不安になり、自身の疑問をぶつけてしまう。
「いいもなにも、お主が決めてくれた名前じゃないか。それを今更取り消すとでも言うのか?」
「いや、そういうつもりじゃないけど……」
 やはりベタな名前というのは変わらないわけで、僕としてはもう少し素敵な名前をつけ
てあげたいと思っているわけで……
「ベタな名前とは思うが、悪くはないと思うぞ。呼びやすくていいじゃないかの」
「…………コンさん」
 あぁ、この人はなんて優しいのだろうか。あんな適当な名前で喜んでくれるだなんて、
この人は本当に――
「さて、名前も決めてもらったことだしの、早速お前さんのために何かをしようかの」
「何かって、何をするんですか?」
 残念ながら今の僕は特に困っていることはないのだけど。コンさんは一体、何をするのだろうか?
「……ふむ。料理じゃ。料理を作ってやろうぞ。お主もそろそろ腹が空いてきた頃じゃろ?
 私が腕によりをかけてお主のために美味しい料理を作ってやろう」
「は、はぁ……」
 確かにお腹が空いて、そろそろ何かご飯を食べたいとは思っていたけど――コンさんは
料理を作ることが出来るのか? 今は人の姿だけど、コンさんはもともと狐だ。稲荷神の
神使とはいえ、狐であるコンさんが人の口に合う料理を作ることが本当に……
「お主、失礼なことを考えておるな?」
「い、いえ……」
 何でコンさんはこんなにも鋭いんだ? やはり神使というのは、伊達じゃないのか。
「また失礼なことを思われているような気がするが……まぁよい。今はそんなことよりも
私がお主に美味しい料理を作る方が先決じゃな」
 耳をピコピコと動かしながら気合を入れるコンさん。よほど料理に自信があるのだろう。
 そこまで自信を見せられると、料理が楽しみになってきた。

「ん〜♪ ふふふ〜ん♪ ふ〜♪」
 楽しげに鼻歌を歌いながら手際よく料理を作っていくコンさん。エプロンを纏い大きな
尻尾をフリフリと振りながら料理を作る様は、凄く可愛らしいものがあった。
 そして同時に、あの尻尾を触りたいという衝動に駆られたがそこはまぁ、気合で抑えた。
「ほれ、お前さんに食べさせる料理が出来上がったぞ」
 特に時間もかからずに美味しそうな料理が目の前に並べられていく。美味しそうな見た
目や匂い。それらが僕を刺激する。
 実に美味しそうな料理の数々。しかし、一つだけ気になることが――
「あ、あの……コンさん。これって――」
「ふふん。実に美味しそうじゃろ? 私はこう見えても料理には自信があるからの。ほれ、
遠慮せずに食べるがいい」
「あ、うん。僕が言いたいのはそういうことじゃなくて……」
 何でこんなにも油揚げが多いのかってことで――油揚げでこんなにも料理のレパートリー
があるのは確かに凄いことだ。
「なんじゃ? お主、まさか油揚げが嫌いなのか……?」
 ギロリとコンさんの視線が鋭くなる。
「い、いやっ! 油揚げは好きですよ! ただ油揚げのレパートリーに驚いただけで……」
「そうか。それはよかったの。もし、油揚げが嫌いなぞと言いおったら、私はお主を嫌い
になるところじゃったぞ」
「あ、あははは……」
 ま、マジですか。油揚げで嫌いになるだなんて、大げさすぎでしょ。


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