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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第8話-35


 雄太と品子の婚約は、祝勝会の場で改めて、その場に居る全ての人々に伝えられた。
「「「おめでとうございます!!」」」
 1部リーグ昇格を祝う宴席は、期せずして、二人の婚約祝いを兼ねることになった。
 もちろん、籍を入れることも、式を挙げることも、全ては卒業してからになるので、具体的なところで動くのは随分と先になる。
 それでも、雄太と品子の指に光る、淡い銀色のドルフィンリングが、二人の絆の新しい形を伝えて、心を暖かにする幸せな気分を振りまいてくれた。


「それにしても、だよ」
 大いに盛り上がった祝勝会が終わり、桜子と大和は今、“蓬莱亭”の2階にある彼女の部屋に腰を落ち着けていた。
 既に場は解散となり、他のメンバーたちもそれぞれ家路についていた。
『今日は泊まっていけばええ』
『遠慮はしないでくださいな』
 龍介と由梨の申し出に甘える形で、大和は今、桜子の部屋にいるのだ。保護者公認の仲だからこそ許される、多少はプレッシャーも感じるが、それを含めての至福的特権といえる。
「いきなりだから、おどろいたよね」
 1部リーグ昇格を祝う乾杯が終わった直後に、雄太は自ら、品子と婚約したことを宣言した。
 この二人が、誰も割って入れないぐらいの仲であることは今更な話ではあるが、正式に婚約までしたと聞かされれば、やはり驚きは出てくる。
「でも、品子さん、幸せそうだったなぁ」
「そうだね」
 指に光っていた、ドルフィンリング。それは、雄太との固い絆を証立てる、品子だけが身に着けることを許された“宝物”だ。
「素敵な二人だよね。うらやましくなっちゃうなぁ」
 桜子はすっかり、結婚に憧れを抱く乙女になっていた。
「………」
 ふと、大和のほうを見る。
 出会ってから1年が過ぎようとしているが、その間に重ねた彼との絆の形は、将来どんな風に進化していくのだろうか…。
(ずっと一緒に、いられたらいいな…)
 つい、そんなことを考えるのは、雄太と品子の幸せそうな姿に、相当の感化を受けたからだろう。
「桜子?」
 視線に気づいて、大和が顔を上げた。期せずして、二人の視線が絡み合う。
「どうしたんだい?」
「あ、えっと…」
 照れたように頬を染めて、桜子は顔を俯けた。
 その仕草がとても可愛らしくて、大和の頬も緩んだ。
「桜子の考えてる事、あててみようか?」
「え?」
 思いがけない大和の反応に、今度は桜子が、俯けていたその顔を再び起こした。
「というか、僕も同じことを考えていたと思う」
「な、なにかな?」
「これからも、一緒にいられたらいいなってね」
「!」
 一段と紅く染まる、桜子の頬。胸がときめいて、高鳴って、呼吸がとても苦しくなった。
(うああ…)
 雄太にプロポーズをされたときの、品子の心境がどれほどのものだったかを思い知る。
「ず、ずるいなぁ」
「? 外れだった?」
「ううん……大正解」
 ドキドキが止まらない。胸に手を当てて、深呼吸をして、桜子は心の平穏を取り戻そうとする。
「リングとかは、無理だけど…」
「え?」
 不意に、大和が近くまで寄り添ってきた。せっかく落ち着き始めていた動悸が、またしてもその針を大きく振動させて、桜子の中に熱を生み出した。
「僕の気持ちは、多分、変わらないよ」
「あ、大和……ん……」
 ゆっくりと顔が近づいて、気がつけば、唇が重なっていた。



 双葉大学軟式野球部にとっての、激闘の1年が終わりを迎えた。
 桜子と大和の加入と活躍によって、チームは格段の成長を遂げ、昨年は果たせなかった1部リーグへの昇格を、ついに達成したのである。
 そして、投手としての復活を期し、それを成し遂げた大和は、同時に、チームの“エース”の座も継承することになった。
 これもまた、一つの転換点である。
 いよいよ、戦いの舞台を1部リーグへと移して、双葉大学・軟式野球部の新たな歴史は刻まれていく。
 その中心にいるのは間違いなく、蓬莱桜子と草薙大和の“黄金バッテリー”であった。


  −続−




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