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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第8話-24

「ストライク!!! バッターアウト!!! ゲームセット!!!」
 桜子と大和のバッテリーが、享和大学の最後の打者を“スパイラル・ストライク”によって空振りの三振に打ち取った時、その歴史はついに動いた。


 隼リーグ・1部2部入れ替え戦
 
  享和大|000|110|100|3
  双葉大|400|000|00X|4

 
 “隼リーグ”の創設以来、一度として達成されなかった“1部と2部のチーム入れ替え”が、双葉大学によって、とうとう果たされたのである。
「勝った、か…」
 2年越しの本願を、ついに果たしたはずの雄太は、しかし、どこかフワフワしたような感触を覚えて、なかなか沸いてこない歓喜のことを不思議に思った。
「……雄太」
「? あ、品子……」
 いつのまにか、品子がそっと側に寄り添っていた。
「みんな、待ってるわ」
「あ、ああ……」
 彼女の適時打によって奪った“4点目”を、追いつかれることなく最後まで守り抜いてくれた桜子と大和のバッテリー。そして、大和の側に立つ桜子が、穏やかに微笑みながら、手にしているウィニングボールを雄太に差し出していた。その後ろには、雄太の奮闘に引き寄せられるようにして集まった、頼もしきメンバーたちも揃っていた。
(俺、泣いてる……?)
 視界が、みるみるうちにぼやけていく。押し留めようと思っても、あふれてくる感情が抑えきれない。
「ありがとうな、みんな…」
 溢れる涙は、拭わない。雄太の中で渦を巻いて流れ出た感情は、それがそのまま、メンバーたちへの感謝の証になるからだ。
「ありがとう、みんな…。ほんとうに、ありがとう」
 だから雄太は、泣きはらして充血した瞳を隠そうともせず、メンバーたち全員の顔をしっかり見据えながら、感謝の言葉を何度も口にした。
「屋久杉先輩、ボールをどうぞ」
 ウィニングボールを手にしていた桜子が、改めてそれを差し出す。
「………」
 それを受け取ろうと左手を伸ばしかけた雄太だが、ふと何かを思いついたように動きを止めた。
「品子」
「えっ?」
 傍にいてくれる品子の右手をそっと握ると、その手を一緒にかざすように、桜子のほうへと伸ばし導いた。
「受け取るなら、品子も一緒に、だ」
「雄太…」
 桜子がにっこりと笑んで、並び合っている二人の手を一緒に包むようにしてウィニングボールを握らせた。品子の目にも、涙が光っていた。
「桜子、そのままにしててくれ」
「はい」
「みんなもこいよ、ほら」
「ああ」
 雄太の促しに、まずは岡崎が反応した。雄太と品子と桜子の手が重なっているところへ、自分の右手を添える。それに呼応するかのように、若狭、栄村、浦、吉川と、添えられる手が順々に増えていった。
「………」
 最後に、チームを勝利に導いてくれた大和の右手が乗せられた。期せずして、マウンドの上で円陣が出来上がっていた。
 その中心には、チームとしての絆の強さを証立てる、重なり合ったそれぞれの手の温もりが、目には見えなくとも、確かな光輝を放っていた。
「Beautifull」
 エレナの目に映る、とても美しい光景。彼女が優しく打ち鳴らした手に呼応するかのようにして、少しずつ拍手が広がっていき、それはいつしか球場全体を包み込んで、祝福の声となって響き渡っていた。



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