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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-4



「・・いって・・」
「な、に、考えてんの・・っ!?今、何しようとしたか・・分かってんの・・!?」

拓斗は叩かれた頬を抑えて顔を上げようとしなかった。
その態度に、瑞稀は更に悲痛な叫びをあげさせた。目には堪えている涙。大好きな人が自分に何をしようとしたのか鈍感な自分でも分かった為に熱を持った頬。
どれも自覚はしているが、どうすることもしなかった。

「こ、ういうの、やって良い人と悪い人がいるでしょ・・っ!?」
「・・・・」
「好きな、人とすればいいじゃんっ・・!!」

“好きな人”そう言った瞬間に、瑞稀の目から涙が溢れた。
まさか、自分で自分をどん底に落とすような言葉を言うなんて。馬鹿にも程がある。
だが、叶う訳がないと分かったあの辛さ。傷が残らなければいいと言われたあの悲しみ。
親友から告げられた、拓斗の恐らくの気持ち。そして、今の行動。
どれを取っても、瑞稀の頭を混乱させるには充分だった。

「何なの・・!?再会したかと思ったら勝手に引っ張ってくるしっ!連れてこられたかと思ったらだんまりだし・・っ!!私に、言いたいことでもあるのっ・・!?」
「・・八神、」

溜まっていた言葉を吐き出した瑞稀を落ち着かせようと、拓斗は腕を掴んで呼ぶ。
しかし、瑞稀はそれを振り払おうとして暴れ始めた。それでも、言葉は止まらない。

「大体、卒業式のあとも意味が分からないっ・・!!傷が、残ればいいってどういう意味・・!?そんなに・・そんなに傷が残って欲しいほど嫌なら私の傍なんていなきゃ良かったじゃん・・!!」
「八神、言うから、」
「好きな人の傍に、いてあげれば良かったでしょ・・っっ!!」
「八神!!聞けよ!!俺の好きな人は・・」
「聞きたくないっっ!!!」

決定的な言葉を言われそうになった瞬間、強く力を込めて振り払った。拒絶の言葉を吐き出して。
しかし、次の瞬間瑞稀は暴れていた為にバランスを崩してプールの縁から勢い良く落ちた。

「瑞稀っっ!!」

拓斗の、悲痛な呼び声を聞いた気がした。だがそれを理解する前に水を大量に飲んでしまい何も考えられなくなった。
すぐにプールに入った拓斗に体を抱き起こされて、水をゲホゲホと吐き出す。
肩で息をし、なんとかすぐに整えようとする瑞稀を拓斗は強く抱き締めた。本当に、強く。このまま整えようとしている息が止まってしまうじゃないというほど。

「・・は、な、して・・」

溺れかけた瑞稀に、先程までの叫ぶ気力は無く、弱々しい抵抗しか出来なかった。
否・・本当は強く抵抗などしたくなかった。久々に感じる拓斗の温もりを、ほかの誰よりも欲していたのは瑞稀なのだから。
それでも、先ほど吐き出した言葉は自分にあったありったけの気持ちの表れだから簡単に体を委ねる気は無かった。
濡れて、張り付いた拓斗のシャツを弱々しく引っ張る。
“離せ”と“離さないで”という二つの相反する気持ちで。


いつの間にか花火が終わっていた。
瑞稀が息を整えている以外、無音の世界に声を発したのは拓斗。

「・・・俺の、好きな人はお前。」
「・・・・・・・は・・?」
「・・お前なんだよ」
「・・・・うそ・・だって、傷残ればって・・」
「残れば・・俺が一生責任取るって言いたかった、だけ。ゴメンな・・」

言われた言葉に、理解が追いつかず思わず服を握り締めている手が震える。
水の中に居る寒さからじゃない。信じられない、この状況が。

「でも・・好きな人、6年の時から居たんじゃ・・」
「だから、それがお前。正確には5年から好きだった」
「・・・え、うそ・・5年・・から?・・解らなかった・・」
「お前がただ鈍過ぎなだけだよ。言っとくけど、他の奴らも知ってたと思う」
「えぇ・・!?」

驚いた瑞稀は、そのまま顔を上げた。反射的に。
拓斗は一瞬目をパチパチさせたが、すぐに小さく微笑んで瑞稀の両肩を掴んで向き合った。


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